彼女は委ねる ページ30
やがて彼女が辿り着いたのは、静かな公園だった。
此処はあまり訪れた事は無いが買い物に行く時に通る道の途中にあり
滑り台とベンチしかない寂しい公園であまり子供達が遊ぶ所は見た所がなかった。
Aが訪れたこの瞬間も周りに子供はおらず
彼女はｸﾞｽｸﾞｽと鼻水を啜りながらベンチに腰掛けた。
脳裏に蘇る先程のおそ松の言葉。
Aはｷﾞｭｳｯ…とクロを力強く抱き締めると、声を押し殺してまた泣いた。
『…あらあら、随分と傷心しているじゃない』
「…！」
すると不意に脳裏にいつもの声が響いた。
気付いてAは抱いていたクロに視線を移すと彼女はいつもの調子で話し掛けてくる。
『可哀想に。まさかあのおそ松に嫌いって言われるだなんて』
「…………」
『ま、所詮はおそ松も悪い人達の仲間って事でしょ？これでわかったかしら？』
クロの言葉一言一言が、よりAの心を抉る。
Aは反論する気さえ起こせずにただ悲しそうに目を伏せていた。
そんなAにまた『可哀想に』と彼女は繰り返すと、クロは優しい声で囁いた。
『あんな奴にあんな事言われちゃって。…大好きだったのにねぇ。
もうあんな奴、関わりたくないわよね？
もう金輪際、口も聞きたくないわよね？』
「………」
『大丈夫、私はアナタの味方だから。私ならアナタを1人にはさせないし、あんな酷い事も言わないわ。
…それともAは、まだアイツの方を取るの？』
「……」
Aの瞳から、光が無くなっていく。
気付けば涙は止まってAの顔から表情が失われていた。
放心。Aはこの時思考回路が停止していた。
余程先程の言葉が彼女を傷付けたのだろう。
しかしそれでもAはクロの言葉には耳を傾け
彼女の言葉に首を微かに横に振ると、何の感情も感じさせない声で呟いた。
「…もう、いいよ。クロ。
こんな思い、もうしたくないから。
はやく自由になって、皆とバイバイしなきゃ」
『……ええ、そうね』
Aのその言葉にクロの声音が僅かに上がる。
やがてAは目を閉じると、ｶﾞｸﾝと糸の切れた人形の様に項垂れた。
直後すぐに目を開いて起き上がり、彼女はベンチから立ち上がる。
しかしその時にはもうAは何処にもおらず
彼女は目を細めて嬉しそうに微笑むと、抱いているぬいぐるみに視線を落としながら優しく告げた。
「それでいいのよ、A…
大丈夫、次にアナタが気が付いた時にはもう自由よ」
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＊IJu＊(プロフ) - 腐女子さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてうれしいです…！更新頑張ります〜(*´∀｀) (2018年4月11日 1時) (
レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
腐女子 - 面白かったです！更新お待ちしてます！ (2018年4月8日 0時) (レス) id: 9891d1bd62 (このIDを非表示/違反報告)
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