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純粋な疑問【一松】 ページ36

『どうして人を殺してはいけないのか』




私がこの世に産まれて6回目の誕生日を迎えた年からの、純粋な疑問だった。


よくテレビのニュースやサスペンスドラマを見て、気がついたらそんな疑問が私の中で浮上していた。

ソレはどんな問題やどんな問いよりも難しいみたいで、この疑問を抱えたまま私は中学を卒業し、高校も卒業し、大学にも行って、成人してしまった。



もちろんこの疑問は色んな人に聞いた。
家族、友達、先生、とにかく私と関係を持った人になら全員に聞いた気がする。

皆が皆真面目に取り合ってはくれなかったけれど
中には真剣に答えてくれた人もいた。


『命を粗末にしてはいけない』

『殺された人の気持ちを考えてごらん?』

『君も死ぬのは嫌だろう?』




でも、皆バラバラだった。


つまり、明確な回答は得られなかったのだ。



確かに命は粗末にしてはいけないのかもしれない。

相手の気持ちも考えてなんていないだろうし、私だって死ぬのは嫌だ。


その回答一つ一つは簡単に理解出来るし、納得も出来る。

でも私の知りたい疑問の回答として、イマイチ納得出来ずにいた。



「一松、どうして人を殺してはいけないの?」



私は今日も懲りずに尋ねる。


今回は松野一松。高校の時の同級生。

唯一近所に住んでる友人で、六つ子の四男。


彼には何度もこの疑問を投げ掛けた。



「またソレ?好きだね」

「気になるの」

「…前は何て答えてたっけ」

「昔の答えをそのまま使わないで。
私は今の貴方に聞いているの」

「ッチ、めんどくせぇ…」



一松は横目で睨みつけてから溜息を吐くと、何処か困ったように頭をボリボリと掻く。


私はそんな彼をじっと見つめて、彼の回答をただひたすら待つ。



「……法に触れるから?」

「大抵は皆そう答えてた。
でも私は知りたいのはその理由なの」

「…殺したらその人はいなくなるだろ?」

「でもよくあるじゃない?
死体をそばに置いておくやつ」

「ソレ、ただの頭狂ってるやつ」

「死体はその人じゃないの?
姿形はそのままじゃない」

「…ホンットお前めんどくせぇな」



一松は実に面倒くさそうに眉を顰めて私から目をそらすと、大きな溜息を吐く。

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ルナストーン(プロフ) - *IJu*さん» なるほど…分かりました!ありがとうございます! (2020年10月14日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - ルナストーンさん» バンは『七つの大罪』って作品に出て来るキャラですよ〜! (2020年10月14日 23時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - *IJu*さん» すみません…あの…バンって…なんの作品のキャラクターなのですか? (2020年10月14日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - 蓮さん» 了解しましたー!お話が思いつき次第更新いたしますので、少々お待ち下さい! (2016年8月2日 22時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゴウセルのデレデレお願いします! (2016年8月2日 21時) (レス) id: fde5658c77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*IJu* | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年2月2日 23時

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