サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ28)

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「あっ…」

ｶﾀﾝ、と私のお箸は地面に落ち、私は思わず声を零す。

皆帆君も落ちたお箸に視線を移し、すぐに私の落としたソレに手を伸ばした。

その時に彼との距離がある程度離れ、私は心の中で胸を撫で下ろした。

「ご……ごめん、なさい…皆帆君…」

「ううん、僕こそごめんね。
ちょっとからかい過ぎたよ」

お箸を差し出す彼から恐る恐る受け取り謝ると、彼は屈託のない笑顔を浮かべた。

流石に落ちたお箸では食べられないので、私は普段はあまり使わないフォークを取り出すと、食べ掛けていた玉子焼きに刺した。

「Aさんが男性が苦手だったって、すっかり忘れてたよ」

「＿＿＿え？」

そして口に運ぼうとしたが、彼のその言葉に思わずその手が止まる。

……な、何で…皆帆君は知っているのだろう。

私が男性が苦手だと言う事に。

私が男性が苦手だという事は、まだ誰にも言ったことがないのに……

「…ああ、どうして知っているかって？
そりゃあわかるさ、だっていつも見てるからね」

私が驚いていると、皆帆君はまるで見透かしたかのようにそう言ってｸｽﾘと笑う。

い…いつも見てるって……な、何だかまるで……

「うん、好きだよ、僕。

Aさんの事」

「へ………？」

流石にこれは声が出てしまった。

変わらない微笑みを浮かべながら唐突に告げられたその言葉に、私の頭は一瞬フリーズ

やっと理解した頃には私の鼓動はさっきとは違う意味でバクバクし始めて、顔に熱が集まるのを感じた。

「あっ、え、ちょ、待っ、えぇっ！？！？」

「ふふっ、顔が真っ赤だよ。可愛いなぁ」

無意味にその場でｼﾞﾀﾊﾞﾀする私は実に滑稽だろう。
だけどそうでもしないと、どうにかなりそうだ。

皆帆君はそんな私をｸｽｸｽ笑っていたが
次の瞬間、表情を引き締めて真面目な顔をし、私の瞳をじっと捉えて、ハッキリ告げた。

「僕はAさんが好きだよ。
でもいきなり今日話した人にこう言われるのも困るよね？

…だから、まずはお友達から始めて下さい」

皆帆君はぺこりと頭を下げるとそっと手を差し出した。

私は恥ずかしさと照れと、ほんの少しの恐怖で頭の中がぐちゃぐちゃで。

でも此処で答えないのは申し訳ない気がして。

「………わ、たし…はっ……」

私は決心すると上手く言葉を紡げない口を使い、彼に言った。