イイタイコトガアル。2 【ダイヤのA】

50. ページ9

.


【御幸side】




「ったくてめーはいつになったらいくんだよ。」

昼休み、無表情で弁当を食べる俺の頭を倉持が叩く。


『いってーな。何すんだよ、』


こいつの言ってるのは多分俺が谷原のところに行かないことについてだろう。

最後に彼女にあってからもう1週間が過ぎようとしていて、それでも臆病な俺はまだ一歩を踏み出せないでいる。



「気持ち悪いんだよ、うじうじしやがって。」

倉持は吐き捨てるようにそういうと隣の席に腰掛けて目を細めて俺を見る。


「お前最近何かと上の空だろ。練習中も試合中も集中してねーし、エラーはするわ打てないわ、」


“あの女に会わないだけでそんなに変わんのかよ。”


倉持の視線はさらに鋭くなる。


「てめーがあの女とどうなろうと俺には関係ねーけどよ、野球に私情挟むんじゃねーよ。お前のせいで先輩たちに迷惑かかるだろーが。」


『やだ〜倉持くん。そんなにカリカリしてると眉間に溝できるわよー。』

「誤魔化すなよ。」


バシッと叩かれた頭。
力強すぎだろ。これじゃ俺ハゲるじゃねーの。俺嫌だぜ？担任みたいにツルっぱになんの。



「何があったのか知らねーけどよ、マジでキモいからさっさと出てけよな。お前と飯食ったって不味くなるだけだし。」

『でもお前俺がいなかったらぼっち飯だろ？友達いないから。』

「あ？んなこと言ったらてめーだって一緒だろーが。ぼっち。」

『俺はめんどくさいから一人でいるだけですー。倉持くんとは違うのよ。』

「俺だってめんどくせーからだよ。別に作ろうと思ったら友達ぐらいいっぱいできるっつーの。」

『へー、言ったな？じゃあやってみろよ、今すぐな。』

「あ？てめー喧嘩売ってんのか？」

『今お前が言ったんじゃねーの。』

「うるせぇ。」

『あ、やっぱり作れないんだろ。やだねー意地張っちゃって。』



「あのさ、お二人さんとも仲良くおしゃべり中のとこ悪いんだけどさ、」

いがみ合いの中、隣から声をかけられる。

「『仲良くない！』」


ばっと振り返れば夏川が笑ってこっちを見てて、
「御幸、あの子が呼んでる。」


彼女の指差した方を向いて目を見開く。


「なんか話があるらしいよー。てかやっぱり綺麗だね、あの子。」

羨ましそうな目であいつを見る夏川を他所に、俺は彼女に向かって走り出す。



「お前、」

ドアのところに立っていた彼女は、俺にヒラヒラと手を振って笑っていた。


.

51.→←49.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す