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最終的に、由里はいちばん得意なガトーショコラを作って渡していた。
それについて翔太と大騒ぎしたせいか、良かれと思って持たせた俺からの分をあの広い胸板に押し付けるようにして戻ってきてしまった。
むしろ顔をデロデロにさせた辰哉に対しての方が、まともに渡せていた。由里たんの手やらかい!夢じゃん!とライン越えの発言をした辰哉はきっちり照からげんこつを食らう。
「こら、由里ちゃん困ってるでしょ。ごめんね。貰った方は一生懸命作ってくれたものへのお礼を言わないといけないのに。ってことで、ありがとう。だいじに食べるよ」
翔太の顔には貰われ慣れてるわ、と書いていた。俺もそう思った。勝てない。
俺は贈ることには慣れているけれど、貰った時にはびっくりして感謝することしかできないから。
スマートだなぁ、と敵ながら惚れ惚れしてしまう。いや敵じゃない。長年の最高の友人だ。
つむじの辺りをしばらくさすっていた辰哉は、照哉のはどんなん〜?ラブレター入ってる?と絡んで大層ウザがられていた。
家まで届けに行く醍醐味は、こういうわちゃわちゃを見られることだよね。
「ふっかしつこい、もう昔のチョコ自慢も聞いたからあっち行って」
「まだまだあるから!しかも全部おもろかったでしょ?」
「あ!き!た!」
「なんでよ〜」
廊下の奥で戯れる辰哉と照哉くん。手元を覗き込む前にちらっと辰哉から憐れみっぽい視線を向けられたから、彼なりに気を遣ったのかもしれない。もちろんあいつが溺愛している由里に。
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作者名:べす | 作成日時:2023年2月13日 15時