Snow cover 3 (ページ1)

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甘党男子にご用心 [all] ページ1

「由里、今年はどんなチョコレートにするの？」

図書館で山ほど借りてきたお菓子のレシピ本。それに埋もれるみたいにしてページを繰る愛娘。

聞いている限りだと絶対にあげたい特定の誰か、というのはいなくて、例年通り学校のお友達と、特に幼馴染には凝ったものをあげる予定らしい。

俺も翔太の分を作りたいし、完成品は当日のお楽しみにしてほしいから家には俺と由里の二人だけ。二つ返事で家から離れることを了承した翔太は、ここぞとばかりに長めのエステの予約を入れていた。

彼女の意思を尊重して、同じキッチンにはいるけれど、何か困ったことが起こるまで手は出さない方針だ。

それにしても、俺が工程の半分を消化した段階で作るものを決められていないのは初めてのことで。オーブンで生地を焼いている時間に洗い物をしながら、ちらちらと横目で様子を窺ってしまう。

そうこうしているうちに翔太が帰ってきて、家じゅうがいい匂いだとツヤツヤになった頬を緩める。その甘い香りが漂う中で、由里はまだ難しい顔をしていた。

「あれ、由里はまだなん？」

「とりあえずお友達に配る分は作ってたんだけど、照哉くんとか亮介くんにあげる分でかなり迷ってるみたい」

「へぇ〜」