6話 ページ6
「一緒に行きたい、連れていってくれ!」
彼の瞳が揺らぐ。
けど、すぐに眉間にしわが寄った。
「駄目だ、今から行くところはすごく危ない所かもしれないんだ、だから家に戻れ!お婆さんやお爺さんを悲しませるな!」
炭治郎が何を言いたいのかなんとなくわかる。
家族を大切にしろって、多分そう言いたいんだと思う。
亡くしてまだ数時間しかたっていないのに、彼はとても冷静だった。自分だったら、こんな風に他人を気遣えたりなんてきっとできない。
「ばあちゃんに、追い出された」
「え?」
「友達なら力になってやれって……自分で決めなきゃいけなかったのに、ごめん…」
戸惑った表情になった彼を、俺はもう一度抱きしめたのだった。
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炭治郎の近くには禰豆子がいない。
「禰豆子は…?」
「…籠の中だ」
え、籠?
確かに炭治郎は竹籠を背負ってる。
でも禰豆子が入れる大きさじゃない、これだと体半分入れるかどうか…
俺の脳裏に嫌な考えが湧き出てくる
まさか、あの怪我が原因で禰豆子は死……
「違う!」
俺の考えを読み取ったかのように彼が言う
「なんで、籠なんかに…」
「…それは…」
炭治郎はぐっと言葉を詰めていた。
どれくらい立ち止まっていたか、どちらともなく動き出すと互いに同じ速度で並んで歩いた。顔を盗み見ると、彼は前だけを向いている。
「禰豆子、怪我は大丈夫なのか?」
禰豆子の怪我が心配で、、何となく口に出してみる。
「…うん、怪我は本当に何でもないんだ」
「そっか、籠の中きつくないかな?」
「少し窮屈かもしれないけど、それも大丈夫だ」
炭治郎が、大丈夫というなら、きっと大丈夫なのだろう
嘘がつけない男だということは俺がよく知っている。
「A」
また沈黙が訪れたと思ったが、それを破ったのは炭治郎だった。
「ちゃんと話すから…禰豆子の事…」
少し待ってほしいと懇願する彼に、俺はただ頷いた。
その表情が強張っていたのを彼は気づいていたのだろうか。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時