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32話 ページ32

俺は結局、ここに来るまでに覚えられた型は伍ノ型までだった。

半年で参までしか覚えれなかったのだから、仕方がないと言えば仕方がない。

俺は覚えるのが異常に遅い。

炭治郎はすでに拾ノ型まで覚えているというのに。要領が悪いったらない。

「あ、ありがとう…!ありがとう……!」

開始早々、三匹もの鬼が一人に群がるだなんて、相当血肉に飢えているのか。

少年は腰が抜けたらしく中々立ち上がれなかったが、持ち直したのを確認するとその場を離れた。

その間鬼は来なかった。ここ一帯には三匹しかいなかったのか?

縄張りでもあるのだろうか……。

俺は思考を停止させる。

まただ、また考えている。

全集中常中は体に染みつき、考え事をしようが何をしようが続くようにはなっていたが、技には支障をきたす。

威力が落ちるのだ。

加えて判断力も落ちる。

生きるか死ぬかの場面でこれは致命的だ。

限りなく無の状態にならなければ、俺のようなやつはここでは生き残れない。

―――――――ッ?!

山を駆けていると、喚き声のような、悲鳴のような騒ぐ声がが嵐のごとく聞こえる。

まるで山に住み着く猿が金切り声を出しているかのようだ。

俺は何かに追われているかのように、真っすぐと声の方へ進んでいく。

「稀血だぁ!稀血稀血稀血ィ!!」

「オレは足をもらうぞ!!」

「じゃあ俺は腕だ!右腕だ!!」

「俺は頭だ!目ん玉が喰いてえぇ!!」

「目は俺も喰いてえんだ!まずは左腕にでもしろ!」

たどり着いた先で、俺が見たものはたった一人に群がる、五、六匹もの鬼共だった。

骨の砕ける音、汚らしい咀嚼(そしゃく)音、舞う血飛沫、断末魔

変に折れ曲がった腕や足がぶらぶらと無気力に揺れている。

そして群がるその中から、ごとりと何かが落ちて、こちらに転がった。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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