【鬼滅の刃】日溜まりは堕ちた【男主】 (ページ21)

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２１話ページ21

Aside

炭治郎が俺の言葉も聞かず、鍛錬に行ったと知った時、全身の力が抜けた。

立っていられなくて、暫く禰豆子の隣に座り、今はその寝顔を眺めている。

「今日は釣りにはいかないのか？」

後ろから聞こえた声に顔を向けると、鱗滝さんが立っていたが、俺はその言葉に返事を返さず顔を元に戻した。

木造の床は人が腰を下ろすだけでも軋む。

隣に鱗滝さんが腰を下ろして胡坐をかいたのはその振動だけでも分かった。

俺は何故ここに来たのか、思い出していた。

来た理由は友達を助けたいと思ったからだ。

ただ、”助ける”という言葉に俺は翻弄されているように感じている。

助けるとはいったい何をさしているのか、測りかねているのだ。

その時の俺は鬼殺隊の事など知らず、ただ炭治郎を一人にしてはいけない、そばに居てやりたいと、そう思ったから追いかけてきた。

しかし突き付けられた現実はどうだ。

俺は鍛錬をする炭治郎の帰りを、家事をしながら待っているだけ。

鬼殺隊になんて入ってほしくないとさえ思っているし、助けどころか邪魔すらしかねない。

「Aよ…ここで、こうして帰りを待つだけでも、炭治郎にとっては掛替えのない拠り所だろう。AにはAにしか出来ないこともある。自分を不甲斐ないと、責めるな、それは違う」

拠り所でいいんだろうか、それだけで。

俺はいいのかそれで。

こうしている間にも、また炭治郎が怪我をするかもしれないし、最終選別に行く日も迫ってくるだろう。

こうしてもやもやとした時間を過ごすのか、これから、ずっと…

彼が家に戻ってくるのをずっと待ってるのか。

そんなの、無理だ。

俺の言葉は彼には届かない。

それなら、いっそのこと自分も同じ道を歩む。

その方が彼の気持ちに、今よりもずっと寄り添えるかもしれない。

それがお門違いだとしても、手をこまねいているよりずっとマシに思える。

「鱗滝さん、俺も…鬼殺隊入れるかな」

鱗滝さんは、俺の言葉にゆっくりと息を吐いたのだった。