20話 ページ20
炭治郎side
Aと出会ったのは俺が5歳の時だった。
隣の山から越してきたというお婆さんと、色白でとても可愛らしい子がやってきた。
俺の住んでいる山には、家は離れてはいたが住民が居た。
しかしお年を召している人にはこの山は少々つらく、息子夫婦が町で暮らしているからと、そちらへ引っ越していったばかりで、家族で寂しくなったねと話していたから、二人いが家に尋ねてきたときはそれはもう嬉しかった。
年ごろの近い子供が近所に住んでいなかったのもあって、Aとはすぐに仲良くなった。
Aは今となってはそのかけらも見えなくなったが、体が弱く、家で寝込んでいることが多かったから、俺は時間を見つけては彼に会いに行き、母に寝る前に聞かせてもらっていた話を教えてあげた。
手を握ると安心して眠れるようで、それに気づいてからは手を握りながら話しかけていた。
ある日俺が熱を出して寝込んでいると、Aがお見舞いに来てくれたけど喉が痛くて声が出なかった。
でもAが持ってきてくれてた飴をなめると、驚くほどスッと痛みが引いて。
彼は俺を横にさせて布団をかけ、手を握る。
その時見たAの優しい笑顔に、俺はひどく安心したんだ。
ずっとこの笑顔が見ていたいと思ったんだけど、すぐに睡魔が襲ってきて、もうすぐ落ちるというとき、Aは何かを聞かせていてくれていた気がする。
あれは何だっただろうか。
「炭治郎、話がある」
彼の制止も聞かず、鍛錬に行き、帰ってきた俺を待っていたのはこわばった顔をしたAだった。
俺は、彼のこんな姿を見たいわけじゃなかったのにと、背を向け居間に上がっていく彼の背を見つめたのだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時