172話 カンコさん ページ45
カンコ「ああ、私はどうすれば・・・。私にはコウもいるのに」
『コウ・・・?息子さんですか?』
もう全部知ってる。なんか罪悪感が
カンコ「コウは今三つで、もう子育てにつかれてて」
『三歳ですか。それは大変そうですね。ようやく言葉を話し始めたくらいですか?』
カンコ「そうよ。お母さんお母さん、何をするにもお母さんで・・・本当にかわいい私の子。でももう限界。お金ももうないし」
金銭的に苦労しているということか。
調べによるとカンコさんは定職についてるわけではないし、学歴もあるわけじゃない。寺子屋に行ったかどうかの資料さえも出てこなかった。
今の仕事はスーパーのパート。人間関係も軽薄で、親身になって話を聞いてくれる人はいないと思われる。
カンコさんは今二十六歳。一緒に働いているのは学生とおじさん店長、四十代の主婦ばかり。
環境が違いすぎる。
『やっぱり、一人で生活費を稼ぎながらお母さんをやるのは大変ですよね』
ここで気持ちわかりますとは言ってはいけないと思う。
恥だけどここは詐欺師の手法を参考にさせてもらおう。
詐欺師はターゲットを決して否定しない。最初はとにかく親身になって話を聞き、共感する・・・というイメージがある。
詳しくはよく知らないけれど人の心に入り込むのなら彼らを見本にするのが一番だよね。
カンコ「そうなのよ・・・!!なのにあの人は、私のことなんて知らないって。コウは俺子じゃないからお前ひとりで育てろよって。
私は、私はただ・・・ただ!!」
『ひどいですね。その人は。あなたみたいな素敵な人を簡単に切り捨てて』
カンコ「そう、そうなのよ!!」
すごく叫ぶなぁ・・・
お客さんがまだみんな、こっちを見てる。
『・・・そうですね。お金に困っている・・・とは借金ですか?』
カンコ「考えています。コウをもう保育園に入れたくて」
『保育園ですか。やっぱり空きないですか?』
カンコ「全然ないわね。どこを見てももう一杯で。値段もうちには結構厳しいし」
『そうなんですね。保育園・・・知り合いに保育園を経営している方がいます。ここから徒歩十分圏にあるんですけど・・・』
カンコ「まあ。いいんですか?」
『もちろんです』
と言ったけど、許可してもらえるかはわからない。
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作者名:すわり | 作成日時:2022年11月13日 18時