165話 うっすらとした新生活 ページ38
理亜視点
『うわ・・・壁が薄い』
なんとなく予想はしていたけど、壁が薄いし、隣の部屋の音が聞こえる。
何なら壁に小さな穴が開いている。これ盗み見用の穴だったんじゃ・・・なーんて。
『穴だけは・・・塞ぐか』
穴が開いているのは左側。奇妙なことに右側には穴どころか汚れすらついていない。
右側だけ壁紙張ってた?
家具は箪笥が一つだけ。部屋全体が殺風景
これ穴絶対この部屋の前の住人が暴れて開けたんだろうな。
だって左隣の人はもうだいぶ前からいないらしいから。
右側には家具か何かを敷き詰めてたんでしょう。箪笥なり本棚なり。
左についている汚れ・・・よくある黒ずみ?にしてはなんだか既視感が。
いや黒ずみもよく見てたんだけど、それ以上に印象に残っている何かな気がする。
汚れと穴のせいでまるでホラー映画の一部みたいだな。窓も小さいし、建付けも悪い。
力を込めてもビクともしない。厄介な。
『荷物は着替えだけ出せばいいよね』
お姉ちゃんの遺品は持ってきたけど、盗まれても困るししまっておこう。
泥棒は大きな荷物を嫌うから、カバンの中に入れて、鍵をつけて、部屋のどこかにくっつけよう。
どうしようかな。テープは引きちぎられたら終わりだし、万一火事にでもなったらすぐに持ち出したい。
箪笥の中にしまうか。
箪笥ごと持っていきたい人はいないだろうし、箪笥に鍵をかけておこう。
右隣には人がいるから、引っ越しそば渡さないとな。
『引っ越しそばと、新生活に必要な諸々を買いに行こう!!』
引っ越しそばは、蕎麦屋さんでそこそこの値段のものを買っていこう。
生だと時間で劣化するから、乾そば買っていこう。
新生活に必要なものといえば、ごはん関係だよね。毎日外食は・・・まあいいか。
作るのは辛いし、台所なんてなかった。
私、結構恵まれた生活してたんだ。
毎日ご飯が食べられて、安いとはいえ、お金ももらえて。
いや、その恵まれていた生活を自分で、完璧にとは言わないけど実現するのだ。
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作者名:すわり | 作成日時:2022年11月13日 18時