薄桜鬼での生活は波乱 (ページ44)

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元治元年六月末ページ44

千鶴side

私がほうきを片手に掃除に勤しんでいると、
ゆったりした足音が近づいてきた。

「すみません、こちらが新選組の屯所ですか？」

「あ、はい──」

背後から声をかけられて振り向くと、そこには一人のお侍さんがいた。

「きみは…………」

「……？」

会ったことがあっただろうか。
私たちの話声が聞こえたのか
ちょうど土方さんが姿を現した。

「土方さん、あの、この方が──」

「あ………やっぱり、トシさん！
八郎です、お久しぶりです！」

「お、おめえは…八郎か？
なんだってこんな所にいるんだ！」

「ふふっ……驚きました？
幕命で京視察に来てるんです

新選組って本当にトシさんたちのことだったんですね！おめでとうございます」

その人は嬉しそうに、まるで自分のことのように笑う。

「まあ、ぼちぼちってところだ」

土方さんが珍しく、照れたように
顔を逸らした。

「あの………土方さん。こちらの方は？」

「そうか、おまえは初めてだったな」

「あ、まだ名乗っていませんでしたね。
僕、伊庭八郎といいます

幕府直参旗本で、大番士奥詰役を務めています」

「あ………私は、雪村千鶴と申します」

まさか幕府の方だったなんて。

「千鶴ちゃん………。改めて、よろしくお願いします」

「は………はい。こちらこそ、よろしくお願いします！」

私と伊庭さんの自己紹介が終わると
土方さんが再び口を開いた。

そういえば、私が女だって話したっけ…

「まあ、立ち話も何だ。中に入ってくれ」

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私たちの話声を聞きつけたのか、建物の方から幹部皆さんが姿を現した。

「おいおい、八郎じゃねえか！」

「聞いたことがある声だと思ったら、おまえだったのか」

「皆さんお知り合いなんですか？」

「江戸にいた頃にちょっとな」

掠実ちゃんは「なるほど」と言うと少し考えるような表情になった。

「幕府直参旗本で、大番士奥詰を務めている伊庭八郎です」

「ああ、幕府の方なんですね。新選組三番隊伍長血桜掠実です。伊庭さんよろしくお願い致します」

掠実ちゃんは綺麗なお辞儀をする。

「はい。貴方は……女性ですか？」

「え、どうしてですか？」

「声が高いですし、体格も……」

「まあバレたら仕方ないですね！一般隊士には秘密にしておいてくださいね」

そういって掠実ちゃんはニコッと笑う。

「分かりました」