【薄桜鬼】華には なれない・続

結び目 5 ページ24

｢…そりゃあ、遠慮しますよ｣
近くに来たことで、以前よりずっと戦いの凄まじさを実感するようになった。
それに、左之助さんの忙しさもずっと見ている。
この人にあるのは私だけじゃないと、痛いほど理解している。
｢荷物になりたくないですから｣
｢…荷物、か｣
左之助さんが足を止めた。どうやら目的地に着いたらしい。
｢今日、山南さんに何か言われたんだってな｣
｢え？｣
｢さっき土方さんに聞いたんだ。まあ、入ってくれるか｣

通されたのは左之助さんの部屋。促されるまま、私は部屋へ足を踏み入れる。
｢山南さん…という方の話は確かに聞きました。私にも力になれることがあるって。あの赤い薬が完成したら新選組は巻き返せるって｣
強いては、平和な世を生きる為に。
私はどうしても左之助さんに生きて欲しい。死なせたくない。
｢…土方さんと千鶴ちゃんには止められたけれど。できることがあるなら、私はしたいです｣
結局私は、浅ましい。
新選組の為協力したいという表面に隠れて、本当は私が左之助さんと生きたいから、ここで居場所が欲しいから、そんな理由ばかり持っているのだから。
意思を告げた瞬間、左之助さんの顔つきが変わる。
｢お前、何言ってやがんだ…そんなのは必要ないって、土方さんにも言われたろ？｣
確かにそう言われた。けれど。
｢役に立ちたいんです。いつまでも甘えていたくない。…ただでさえ、私は邪魔なのに｣
｢A…！！｣
私の言葉に怒ったのか。距離を詰めた左之助さんは強い力で私の肩を掴む。
｢っ、｣
目前の左之助さんの瞳には、怒っているような、悲しんでいるような、複雑な感情が見えた。
｢邪魔だなんていつ誰が言った｣
いつになく低い、冷たい声。まるでふつふつと怒りが湧いているような、そんな風に左之助さんから言われたのは初めてだった。
｢そんなのは自分で分かります…｣
｢じゃあそれはお前の勝手な思い込みだろ！？｣
｢思い込みじゃありません！！｣
すぐに否定されてカッとなった私は、つい大きな声を出してしまった。
左之助さんも驚いたようで、目を見開いている。
｢…事実です。私が傲慢に、貴方に会いたいと何も知らずに押しかけて、居座って…。図々しい、刀も握れない女のくせに…｣
事実以外の何物でもない。私の存在は新選組の和を乱している。
そのまま、私は感情に任せて言ってはならないことまで言ってしまう。

｢左之助さんも…私が来て本当に良かったと思ってる？来るなよって、思ったんじゃない？｣

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