結び目 3 ページ22
「…君は、原田君が連れ帰った方ですね」
「はい。お世話になっております」
人からの視線というのは、これまで痛いほど感じてきたけれど、何故だろうか。
この人は穏和な雰囲気であるものの、その目は少し怖いと感じた。
ともあれ、私は千鶴ちゃんに竹筒を手渡す。
「ありがとうAちゃん。…山南さん、一つで良いですか?」
「ええ。ありがとうございます。助かります」
「いえ、何てことありません」
その人はふわりと微笑む。その笑みの違和感は何なのか、私には分からない。
「ところで、例の話ですが」
「!山南さん、それは」
「君も、今の新選組の状況は知っているでしょう?薬が完成すれば、戦況を巻き返すことは可能です」
…薬?戦況を巻き返す?
なんの事か分からないけれど、それは私が聞いて良いのだろうか。出て行った方が良いだろうか。
ちらりと千鶴ちゃんを見れば、なんだか…身を強ばらせているように見えた。
「…あの」
大丈夫なのかと声をかけると、笑みを崩さないその人は、今度は私に声を向けた。
「そうだ君も…彼女を説得していただけませんか」
「説得?」
「ええ…彼女の協力さえあれば、新選組はまた力を取り戻せるのですが…なかなか了承していただけないもので、私は困っているのですよ」
あまり理解ができない。千鶴ちゃんの協力があれば新選組が増力する、ということの真意が読めない。
「辞めてください、山南さん…!Aちゃんを巻き込まないでください…!」
千鶴ちゃんを無視して、その人は説明を続ける。
「私はとある薬の研究をしています。その薬が完成すれば、戦況を大きく変えることができる」
「薬…?」
「ええ。人をより強く薬です。上手く行けば、原田君も君と平和な世を生きられるかもしれませんね」
思わず見つめた先に、小瓶に入った赤の液体があった。
「これです。素晴らしいでしょう?是非、君にも協力をお願いしたい。新選組の力になっていただきたいのですが」
小瓶の中で揺れる赤。惹き込まれるようにその色を見つめる。
「駄目…!Aちゃん、駄目!」
どうして千鶴ちゃんは否定するんだろうか。分からないけれど、新選組にとってお荷物の私に役に立てることがあるなら、私はしたい。
是非協力したい。そう返事をしようとした時だった。
「そこで何してやがんだ、山南さん」
「土方さん!」
割って入るように現れた土方さんに、千鶴ちゃんが駆け寄る。
即座に赤が手のひらで隠され、変わらぬ笑みでその人は言った。
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あめ(プロフ) - 八福神さん» 早速のコメをありがとうございます!通知オンにしてくださってたんです…!?懐かしいと言っていただけることに感激しております…!!相変わらず拙い文章ですが、よろしくお願いします! (2021年4月15日 23時) (レス) id: c4879c790e (このIDを非表示/違反報告)
八福神(プロフ) - うわぁぁ、懐かしい!。゚(゚´Д`゚)゚。7年越しのあとがき!!私ももう成人してしまい、夢小説を書くことが減りましたが、この小説が更新されたと通知が来た時にあの頃が懐かしくなりました!青春()だったなぁ…。連載再開、とても嬉しいです! (2021年4月15日 14時) (レス) id: 65f524c224 (このIDを非表示/違反報告)
雨星(プロフ) - オタクチャンさん» はじめまして!ありがとうございます(*^_^*)更新頑張ります…(;^ω^) (2014年12月15日 14時) (レス) id: ce9118306d (このIDを非表示/違反報告)
雨星(プロフ) - あっちゃん25さん» 長い間コメントを見ておりませんでした…申し訳ないです…m(_ _)m更新が大分遅くなってきてしまい、これまた申し訳ないm(_ _)mあっちゃんさんありがとうございます! (2014年12月15日 14時) (レス) id: ce9118306d (このIDを非表示/違反報告)
オタクチャン - はじめまして!続き楽しみにしてます(^o^)/更新頑張って下さい。応援してます! (2014年12月10日 18時) (レス) id: 8d5d205d7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あめ(雨星) | 作成日時:2014年6月7日 14時