返りそこなった俺が嗤う完結編 (ページ3)

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潤

朝
まだ誰も起きていない時間にそっと起きる。
朝は苦手だけど、兄達の美味しそうに食べる姿が見たくて、進んでキッチン番をやっている。
顔を洗って無理矢理眠たい目を起こすと、よしっと気合を入れてキッチンに立つ。
紫色のエプロンをキュッと締めれば気持ちも一緒に引き締まった。

フライパンを出し油を引いて温めてる間に手早く卵をボウルに割り入れてかき混ぜる。
温まったフライパンに一気に卵を流し入れれば、ジュワッと音を立てて良い匂いが広がった。
完全に火が入る前にお皿に盛り付ける。
トーストはフライパンでも焼いていく。
なにせ男五人所帯だ。トースターでいちいち焼いていたら日が暮れる。
フライパンとトースターをフルに使って8枚ほど焼き上げる。
食べたい人は2枚食べれば良いし少食な人は一枚で良い。足りなければまた焼く。
コーヒーメーカーにカップをセットしたあたりで2階から2番目の兄、翔にいが降りてきた。

翔「おはよー。今日も良い匂いだな。」

翔にいはそのまま洗面所に顔を洗いに行く。

大皿にパンを全部どさっと乗せてしまうと残りは他の兄弟が起きてくるまで休憩だ。

顔を洗ってきた翔にいは、俺が玄関から持ってきておいた新聞を手に取るとリビングのソファに座った。

翔「あ、潤。あのさ、今日は…。」

潤「分かってる。肉の日でしょ?夜ね。」

そう言うと申し訳なさそうにありがとうとお礼を言ってきた。
……別に良いのに、気にしなくて。

そんな気持ちを込めて2番目の兄の前にコーヒーを置く。

翔「お、サンキュ。」

バサリと新聞を広げてコーヒーを飲む姿はとても絵になる。
毎朝新聞を読むのが翔にいの日課だ。
もうそんなの読む必要はないんだけど、読まないと落ち着かないらしい。
普通紙を読み終わるとスポーツ紙。釣りのコーナーのとこにだけ折り目をつけてさとにいの席に置く。

一番上の兄、さとにいは釣りが好きだからいつも翔にいは折り目をつけてあげている。…ほんとに相変わらず甘やかすんだから。

そうこうしているうちにぞろぞろと他の3人も起きてきた。

おはよーなんて口々に言いながら自分の席に座る。

翔「おはよ。」

翔にいが綺麗に微笑めば皆もつられて笑顔になった。

そんな笑顔に、今日も何事もなく兄弟5人での幸せな空間が続くのだと密かに安心した。