返りそこなった俺が嗤う完結編 (ページ4)

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翔

あの日、5人で過ごしていくことを決めた俺たちはそのまま家に帰った。

でも、どうしても兄弟達は俺を失うかもしれなかったことが怖かったみたいで。
そのまま俺はこの家の中から出ることができなくなった。
玄関の方に向かっただけで誰かしらが縋りついてくる。
それを振り払うことが出来ないのは、勝手に鬼になった負い目だろうか。

でも

このままじゃいけない。見せかけの幸せなんてどこかで必ず綻びが出るのだ。それこそ、俺が鬼になったみたいに。

この家という箱庭に浸っていたら鬼の力の成長度も、限界も分からないままだ。
それに兄弟たちの精神衛生的にも良くない。

第一俺が鬼になった理由の一つが、守られているだけが嫌だったからなのだ。これじゃぁ同じこと。
いつまでもお互いに依存してちゃいけないしな。

俺が外に近づかないようにテーブルの上に置かれるようになった新聞を手に取る。
キッチンからは潤の作っている朝食の良い匂いが漂ってきた。

翔「あ、潤。あのさ、今日は…。」

潤「分かってる。肉の日でしょ?夜ね。」

分かってるというように頷く潤にお礼を言う。
そうすると気にしなくて良いというように目の前にコーヒーが置かれた。

翔「お、サンキュ。」

バサリと新聞を広げてコーヒーを飲む。今のところ俺の数少ない外の情報源だ。

新聞を読み終わるころ、他の三人が起きてくる。

おはよーという挨拶の声に俺は穏やかに微笑みながら返すのだ。

翔「おはよ。」

そうすると安心したように笑う兄弟たち。

今後の俺たちのためにもそろそろ潮時だ。砂糖菓子みたいな、甘いけど添加物だらけのこの空間とは訣別しなきゃいけない。

決行は明日の早朝。まだみんなが起きる前。

あぁ、この笑顔にまだ騙されてくれるみたいで良かったよ。