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四十話 ページ40

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国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

夜の底が白くなった。


川端康成著『雪国』より。


.



「Aちゃん」
「太宰幹部」

「もう太宰幹部じゃないさ」

「それは?」
「マフィアを抜けるよ」

太宰さんは穏やかな笑みを浮かべた。


―――織田さん、か。


名も無い墓標の前に花を添える。



「――――作之助さん」



嗚呼、又た涙か。


手の甲で涙を拭く。
そして太宰さんに向き合った。


「Aちゃん、これ」
「これは・・・」


あの人と撮った写真。
写真の中の私は相変わらずの無表情で。
こんな時くらい、笑えば良かったのに、私。

「Aちゃんが持っていてくれ給え」

「・・・はい。
それで、太宰さんはこれから…?」

「・・・人助けが出来る転職先を捜すさ」
「・・・人助け」



それならば、


「武装探偵社、は如何でしょうか?」

「それは君の職場かい?」
「気付いていたのですか」

「まあね」

にこっと笑うこの人には一生敵わない気がする。

「・・・済まないね」
「・・・え?」

「織田作を止めきれなかった」

「・・・嗚呼。
いえ、太宰さんの所為ではないです。

あの人が、望んだことだから。

望んで全てを終わらせた」
「全く、織田作は罪な男だね。
こんな美人の心を射止めておきながら、置いて逝ってしまったのだから」

こんな時までお世辞か。

風が頬を撫でる。
太宰さんは二年間ほど地下に潜ることになるだろう。

「・・・是非、探偵社へ来てくださいね」
「そうする心算だよ。


_______織田作からAちゃんの事を頼まれたしね」


「そう、ですか」



彼は最期まで、優しいんだ。







_______さあ、探偵社へ帰ろう。



皆が待っている。


____fin.

.後書き.→←三十九話



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Smile - 読んでてとても楽しかったです!!!続編待ってます (2018年1月16日 20時) (レス) id: 7981af13dc (このIDを非表示/違反報告)
団子 - 続編読みたいです!頑張って下さい! (2017年11月11日 16時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - すごく面白かったです!織田さんとの恋愛が読んでいて一番印象的でした。続編、楽しみです! (2017年10月8日 3時) (レス) id: eef365d12e (このIDを非表示/違反報告)
ぐーさん - 初めまして。あもサン (2017年5月30日 23時) (レス) id: 18ff760733 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - この作品、何回も読み直すくらい大好きです!!主様、頑張って下さい。 (2017年3月31日 22時) (レス) id: f4f41de96b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あも | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年12月31日 18時

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