五話 ページ7
「あ、あともう一つ!」
「何だ。」
わたしはにっこり笑う。
「若し、また会えたらその時は私もあなたの部下にしてよ。」
福沢さんは黙る。
少し経ってから口を開いた。
「また、会うことがあればな。」
よしっ、将来探偵社入社は約束されたねっ!
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――――――あれから。
私は十四歳になった。
早い?小説だから。
勿論、殺し屋。
抵抗はあるけど、こればっかりは仕方がない。
今は喫茶店にいた。
雨が降っていた。
行きつけの喫茶店のいつもの席に座る。
本を開く。
もう、何度も読んだ。
「お嬢さん、何時もその本を読んでるな。そんなに面白いか?」
背筋の伸びた壮年の男がいた。
薄笑いを浮かべ、杖をついた。痩せた男。
口元に短い髭を蓄えていた。
私はこの人を知っている。
「面白いよ。」
そう云うと、男は奇妙なものを見る顔で私を見る。
「変わったお嬢さんだ。そんな小説より面白い話が世の中ごまんとあるぞ。
お嬢さん、その本、下巻はどうした。」
「持ってないよ。」
「それで得心がいったわ。幸運なお嬢さん。
その小説は下巻がとんでもなく最悪でな、
読んだ後、頭蓋骨から脳を取り出して水洗いしたくなるような代物よ。
上巻と中巻だけで満足しておけ。
それがお前のためだ。」
「そうもいかないよ。寧ろ興味が湧いてきた。」
「ふむ。ならばお前が書け。
それが唯一、その小説を完璧なままにしておく方法だ。
小説を書くことは人間を書くことだ。
人間はどう生きて、そう死ぬべきかという事をな。
儂が見たところ、お前にはその資格がある。」
その言葉は私の心にストンと落ちた。
「おじさん。名前は?」
知っているけど訊く。
「儂の名は――――――」
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後日、一冊の本が置いてあった。
表紙には『後悔しても知らんぞ』という紙片が貼り付けられていた。
下巻だった。
私は一日かけてその本を読んだ。
感想は――――
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ツツジタケ - つづ...続きを...すごく好きなので続きが欲しいです! (10月28日 11時) (レス) @page10 id: 5d2983dfbd (このIDを非表示/違反報告)
眠いちゃん - 続きがない…?! (8月14日 16時) (レス) @page10 id: 07b28c2f89 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 闇九尾さん» 有り難う御座います!これからもよろしくお願いします。 (2016年12月5日 19時) (レス) id: fa5d163a15 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 夢見草さん» 嬉しいです。有り難う御座います! (2016年12月5日 19時) (レス) id: fa5d163a15 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 我らが暴君ボスLOVEさん» 有り難う御座います!頑張ります。 (2016年12月5日 19時) (レス) id: fa5d163a15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あも | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月28日 21時