花十六輪 ページ36
「え?でも、」
「確かに、俺と光里は血は繋がってねぇ。本当の親は彼奴だ。
だが、この二年間は確かに俺が父親だった。此れからもだ。
だから、光里の父親は俺だ。
それで問題ねぇだろ。」
な?と笑みを浮かべる中也さん。
嗚呼、敵わないな。と思った。
だって、私が中也さんの立場だったら嫌だっただろう。その子をきっと、我が子のようには愛せない。
それが、普通のこと。我が子のように愛するのは難しいこと。
なのに、この人はそれを当たり前のようにやってのけた。
本当に、敵わない。
だから、好きになったのだろうけど。
「・・・うん。」
▽
「どうやら男の子のようですね。」
「男の子・・・・」
「おとこのこー?」
「嗚呼、光里に弟が出来たんだぞ。」
「おとうと!!」
産婦人科には家族揃って出かけた。
もう、性別も分かった。
二人目だから、そんなに長くはならないだろうと、お医者様は云っていたけど、矢っ張り少し、不安だ。
不安だけど、きっと、大丈夫。
▽
「お買い物行こっか。」
「うん!行く!」
光里と手を繋いで、外を歩く。
お腹も大分大きくなった。
大変だけど、嬉しい。
早く会いたいな、なんてことを思う。
「ねえ、」
「あ、はい、」
突然、すれ違った人に声をかけられた。
振り返った次の瞬間、
「っ・・・・う、・・・じん、つ、う?」
「ママ?」
「矢っ張り。」
その人はまるで分かっていたかのように呟いた。
遠くから、救急車のサイレンが聴こえる。
近付いてきた。
「大丈夫ですか!?」
救急車はすぐ近くにとまった。
どういうことなのか、混乱する。
「僕が呼んどいてあげたよ。感謝してよねー。」
「あな、たが?」
「そう。放っておいて大惨事になったら後味悪いから、連絡しておいたんだよ。」
と云うとその人はくるりと踵を返し、去っていった。
▽
そこからは、よく覚えていない。
意識がはっきりとしたのは、赤ちゃんの産声が聞こえてきたときだった。
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椛 - すみませんコメ欄でパスワードをご教示されないという所を読んでいなくて不躾な質問をしてしまいました。申し訳ございません (2022年3月28日 18時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
椛 - 弱虫彼女の言行録【中原中也】のパスワードをお教えください! (2022年3月28日 17時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨花火(プロフ) - あぁーもーこの作品す☆き☆これからも頑張って下さい!! (2018年8月19日 22時) (レス) id: c6a781ea39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あも | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huzisaki5
作成日時:2018年5月22日 20時