花弁が十一枚side中原 ページ12
「・・・・ん、」
────嗚呼、寝ちまってたか。
Aの子供を預かってから、いつの間にか寝ていたようだ。昨日も遅かったからだろう。
そんなことを考えて、ふと、気がついた。
「・・・・・何だ。手前らも寝てんのか。」
腕のなかで眠る赤子と、自分の傍で寝るAを見て、呟く。
疲れていたんだろう。しょうがねぇか、と苦笑する。
腕の中にいる赤ん坊を見つめ、不思議だと思った。
何故、自分はこの子供を引きと取ろうと思ったのだろう。
血も繋がらない、赤の他人。
なのに、態々子持ちの部下を捕まえて、必要なことを聞き出したりもした。
そして、可愛いと思う。
───別に、子供好きじゃねぇんだけどな。
心の中で頸を傾げる。
赤ん坊は温かい。
生きている。それが痛いほどよく判る。
だけど、小さい。そして、弱い。
果たして、ちゃんと出来るのだろうか?と、柄にもなく、不安を抱く。
「・・・・光里。」
子供の名前を呟く。その言葉も、温かさを持っていた。
光里、と呼んでも良いのか。
Aは父親になってほしいと云った。
呼んだって、構わない。
だが、自分はその名前を呼ぶのに相応しいのか、判らない。
「うー・・・」
「・・・あ、目、覚めちまったか?」
子供の何の濁りのない瞳が、自分を見つめる。
綺麗な眼。母親に、そっくりだ。
「うー、あー、」
子供の手が、伸びる。こちらに向かって。
何かを掴もうとしてるのか、それとも、別の何かか。
判らないが、目が離せない。
次の瞬間だった。
「あうー!」
「っ・・・!」
────笑っ・・・た?今、笑ったのか?
確かに、笑った。
にぱっと、花が咲いたように。
そっと、震える指を子供の手に近づける。
ぎゅ、と握られた。
温かい。
「____俺で、良いのか?」
まだ、一歳の赤ん坊に訊ねても、判らない筈なのに、問い掛ける。すると、不思議なことに、
「う!」
と返事のようなものをした。否、偶然なのかもしれない。だけど、それは、充分なもので、
「・・・・俺で、良いんだな。」
_____光里。
その子の名前を呼ぶ。
「うー!」
光里は楽しげに、もう一度、笑った。
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椛 - すみませんコメ欄でパスワードをご教示されないという所を読んでいなくて不躾な質問をしてしまいました。申し訳ございません (2022年3月28日 18時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
椛 - 弱虫彼女の言行録【中原中也】のパスワードをお教えください! (2022年3月28日 17時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨花火(プロフ) - あぁーもーこの作品す☆き☆これからも頑張って下さい!! (2018年8月19日 22時) (レス) id: c6a781ea39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あも | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huzisaki5
作成日時:2018年5月22日 20時