wt短編集【ワールドトリガー】 (ページ12)

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｢好きです｣
中学1年生の頃、貴方は私に飽きずに毎日毎日
こう言った。
その度に私も飽きずに毎日毎日
『勘違いだよ』
こう言った。

急に親の離婚で転校するのが決まった日、
真っ先に思い出すのは村上鋼のことだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あれから5年の月日が経ち、お正月の集まりを
するからと三門市にある祖母の家を訪れた。
5年間、ずっと三門市に来なかったのは、
村上さんと会うのはまずいと思ったから。

引越しをするのが決まっても誰にも言わなかった。

それは、

｢Aか、?｣
こうなるから嫌だった。
目の前に村上鋼がいる。
車から出たらいきなり村上鋼に声をかけられた。
なんで。

なんでいつも貴方はこんなにタイミングがいいのか。

｢ずっと会いたかった｣
嬉しいのかもしれない。
いや、嬉しくなんかない。

『うん』

｢Aの声が好きなんだ｣

｢もっと聞かせて欲しい｣
何も事情は聞かずに接してくれる。
そんな優しいところが嫌いだった。

｢好きなんだ、ずっと大好き｣
微笑みながら、私を愛おしそうに見つめながら
そう言う。

やめて、やめて。

私と貴方は不釣り合いだから。
クラスの中心にいるような、いや、
世界の中心にいるような貴方は世界の中心に
いるような女にその言葉をかけなくては
いけないから。

世界の端にいるような私じゃだめだから。

だから、お願い。

『他の子を好きになって』