アトリエに残された桜 (ページ17)

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「ちょっと俺、トイレ行ってくるね」

翔くんが立ち上がる。それを聞いて相葉くんも釣られたように立ち上がった。

「あ、じゃあ俺、先に仕事戻るわ。松潤も早く戻ってきてね」

「あ、はい」

「ははっいつもの逆だね」

「相葉さんに言われると…なんか納得がいかない」

ちょっとムッとして頬を膨らませた松潤は拗ねた末っ子みたいで可愛かった。

『ふふふっ』

その少年っぽさに思わず笑ってしまう。

「そんなに笑わないでください…」

『ごめん、可愛くて笑』

「…大野さん」

2人になったテーブルで急に松潤が真面目な顔になった。スッと伸びた背筋と真剣な眼差しに俺も背筋が伸びる。俺たちの1メートルあるかないかの距離が一瞬にして氷になったみたいだ。

「…大野さんは翔くんのこと、どのくらい知ってる？」

『…え？』

急に、探られるような試されるような質問をされて頭が追いつかない。どのくらい…って？

「ぁ、ごめん。昨日会ったんだったね。知らなくても当然だ」

『ど、どういうこと？』

「大野さんは…これから知っていけばいいよ、翔くんのこと」

意味深に微笑む松潤からはどこか見覚えのある雰囲気を感じた。松潤が何を想ってそんな顔をしているのか俺には分からなかった。と、松潤が俺の方にぐいっと近づいてこう言った。

「だから、翔くんのこと離さないでね？」

パチンと音がするような綺麗なウインクを決めて茶目っ気たっぷりに笑った松潤は男の俺でも惚れるほどのイケメンだった。あれ、俺今日何回イケメンって言ったかな？

「じゃあ、俺も戻るから。またね」

あまりのイケメンぶりに呆気に取られたまま松潤を見送る。

すると、今度は別のイケメンが戻ってきた。

「あれ、松潤も仕事戻ったの？」

翔くんがトイレから帰ってきた。

『はあ～イケメンっていいなあ』

「えぇ？」

あ、心の声を漏らしてしまった。

『こっちの話だよ』

「あぁ…そう。あのさ、この後ってなんか予定ある？」

唐突な質問。今日は昨日仕事を終わらせたのでゆっくりできる。

『何もないよ？』

不安げな顔からパッと笑顔になった。翔くんの表情がコロコロと変わっていくのがなんだか面白い。

さっき、松潤が言ったこと。これから知っていけば良いということ。

「じゃあさ、遊びに行かない？」

俺はもっと知りたいと思った。翔くんのこと。