…純粋ゆえ馬鹿… ページ13
「その体を、これからの人生を捨ててもか？」
クロロの質問にAは答えられなかった。
やましい気持ちは全く無かったが、クロロの責める様な口調に頭が混乱した。
「俺からイルミに交渉して条件の取り下げをする、いいな？」
『な…何言ってるかなー。 クロロちょっと落ち着こう、ね？』
「充分落ち着いてる。 だがイルミの執事なんてAじゃ命が幾つあっても足りないぞ」
『え？』
執事？とクロロの言葉を頭で反芻するA。
ああ、全容は知らされていないんだと安心する。
「違うのか？」
『えっと、私も急いでたからあまりイルミの話を理解してなくて。 執事…うん、執事するの』
ゾルディック家総意の条件である「子を産む」事は知られてなかった。
「やめておけ。 俺を背負うだけで重いなんて音を上げてちゃ勤まらないぞ、特にイルミは」
『あ、あははー…聞こえてたんだ』
縮こまりクロロから逃げながらAはキッチン下の床下収納を開ける。
『全然食べてないじゃない！ ずっと飲まず食わずだったんでしょ？ 何か食べなきゃ』
「一応見たが食欲が湧かなかった」
『んー、これならどう？ 子犬用ささみペーストタイプ』
「…おい、明らかに人間の食べ物じゃないぞ」
『子犬が食べれるんだから人間だって食べられるよね？』
え、何が問題？といった顔で聞いているあたりAは本気らしい。
Aが今迄どんな生活をしてきたか不安になるのはクロロだった。
パキッと音を立てその缶詰めを開けて味見しようとしていたので慌てて取り上げたが。
『あ、食べる気になった？』
「…いや…これは外の木にでも置いて野生動物にでもやればいい…」
『わあ、クロロ優しい！』
分かりやすい嘘さえ信じて目を輝かせるAにクロロはドン引き。
そして二度とAに食をせかされない様、自分でチョイスせねばと心に誓った。
「それより体が随分冷えてる、シャワーでも浴びてこい」
『うん、クロロは何か選んで食べておいてね？』
「ああ」
Aのご機嫌が戻ったところでクロロは犬の缶詰めとミカンの缶詰めを手に取り外へ出る。
木の枝に犬の缶詰めを置き、離れた場所にミカンの缶詰めの中身だけ土に埋め偽装工作する。
「馬鹿なんだか利口なんだか…」
大人になったAとの再会は酷い形であった。
だがどうしようもない程に愛しいと思えるA。
その温もりがすぐ傍にある事を喜ぶクロロだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 414人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みお(プロフ) - あー…ほんとに主様の作品大好きです…。今日一気読みしてもうほんとに好きです(？) (2022年10月2日 23時) (
レス) @page48 id: 98c132f21e (このIDを非表示/違反報告)
和花 - 絵めっちゃうまいし、とても面白いです！他の話も読みました！ゆーじさんが描く話、とても大好きです！ (2022年2月9日 14時) (レス) id: 7730c8acb7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - メッセージありがとう〜！もう週明けになっていたとは…時間の流れが早過ぎて驚いた。遅くなってしまって本当に申し訳ないです！スミマセン…!! (2019年2月25日 1時) (レス) id: 48b034f42e (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - テスト前故しばらく浮上してませんでした...。気づいてなくてすみません(汗)桜の方、ちょっと覗いてみてください。更新はまだ先になります。次の更新も、楽しみにしててください！絶対ですよ！ (2019年2月22日 21時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - kayaさん» こんな自分がkaya様を何と呼べばいいのか…!!!?か…かや…kayaさん!!もー本当にイイ子だー…ちゃんと躾されていい友達にも恵まれて素晴らしい人生歩んでいそう。勿論辛い事もあると思うけれどそれでkayaさんの才能を潰さないようにね。kayaさんの夢、叶う事願ってるよ。 (2019年2月20日 1時) (レス) id: 48b034f42e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆーじ | 作成日時：2018年11月4日 5時
