ヒロインの資格 ページ29
休日をはさんでやってきた、太輔出演のドラマの放送日。
オレは朝からソワソワとして落ち着かなくて、何回も録画の予約確認をして、仕事中も頭の中はドラマの事ばっかりだった。
相変わらず太輔は薔薇を買いに来てオレに押しつけてきた。その、もう随分慣れつつある行為に気恥ずかしさを感じながら一日を終えて、ようやく、長い長い一日が終わった。
後から外に出てきた宮田が店の鍵を閉めて、うん。って頷きながらオレを振り返る。
「じゃあ、横尾さん。今日もお疲れ様でした」
「うん。お疲れ。…はあ。長い一日だった…」
「えっ、そう?まあ確かに、今日は少しお客さん多かったかな…」
見当違いな相槌をうった宮田が、へらりと気の抜けた笑みを浮かべる。その表情に少し肩の力が抜けたと思ったら、宮田がぽんと手をうった。
「そういえば今日ですね。藤ヶ谷さんが出るドラマ」
「ん?…あ、うん…」
「楽しみだなあ。身近な人がテレビやドラマに出てるなんて今でも信じられないけど。なんか、俺のほうがドラマ見るの恥ずかしい感じがして」
宮田の言葉に、強く頷く。
そうなのだ。恥ずかしい、んだ。
芝居をしてるのは太輔の方なんだから、オレが恥ずかしくなる理由なんてどこにもないはずなのに…ドラマを見るのが恥ずかしいというか、くすぐったいというか…少し抵抗がある。もちろん、楽しみでワクワクする気持ちも大きい。それは間違いないんだけど…でも同時に、どうしても、ぞわぞわとむず痒い気持ちになるのだ。
「オレ達が恥ずかしい理由なんか、どこにもないはずなのにな」
オレの小さな呟きをしっかり拾った宮田が、あははっと朗らかに笑う。
「でも横尾さん、そんなすごい人に求愛されてるんだもんね。なんか、本当にヒロインのお姫様みたい」
「っ」
求愛されてる。
その言葉が、オレのみぞおちをきゅっと軋ませる。求愛…か。
愛じゃなくて友情だったら、贈られるのが薔薇じゃなくて握手だったら、きっと隣にいるのも今より簡単だったのにな。
「結婚式には呼んでくださいね。お花もぜひ、うちの店で。なんて」
そんな軽口をたたく宮田に上手く言葉を返せずに、俯いてしまう。
オレの体が、一回り小さくなった気がした。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時