ヒロインの資格・2 ページ30
家に帰ってご飯を食べて、ドラマが始まるまでにさっさとお風呂に入ろうと、風呂を洗おうとした。そうしたら、溜まってた洗濯物や洗い物の存在に気づいてしまった。
一度気になったら放っておけなくて、ごそごそと動いてのんびり風呂に入って――はたと気づいた時には、太輔の出る予定のドラマは半分以上終わってしまっていた。
やばい!
焦ってテレビを点けると、ちょうど、赤い薔薇の花束を抱えた太輔のアップが写し出された。どきっと胸が高鳴る。
「っ、太輔…」
テレビの中の太輔は、毎日オレに見せる顔と同じ、甘く爽やかな微笑みで、毎日オレに贈る花束と同じ、まっ赤な薔薇の花束を抱えていた。
ひとつ違うのは、太輔の服が白のワイシャツに黒のエプロン姿だという事だけだ。
胸がざわっとして、背中の産毛がぶわっと逆立つ。
『俺の気持ちです。どうか、受け取っていただけませんか』
太輔が、オレに見せるのと同じ笑顔で花束を前に差し出す。
でも、と困惑気味な女性の声とともに、太輔の相手役の女優さんの姿が映った。
さらさらした黒髪のロングヘアーの彼女は太輔より随分小さく華奢な体で、吸い込まれそうなほど大きくて、魅惑的な黒目がちの瞳を揺らしている。まっ白なワンピースと高いヒールがよく似合っていた。
たしか、家元のお嬢様だとかなんとか言ってた気がする。
生まれも将来も約束されたヒロイン。
オレとは、正反対の人。
太輔は、同じ声でまなざしで見つめる。
じゅく、と胸の奥が疼いた。
なぜか二人を見ていられなくて、そっとテレビから目をそらす。そんなオレの耳に、決定的なセリフが飛び込んできた。
『好きなんです、あなたの事が、ただ。あなたが例え、危険な棘を貯えた薔薇だとしても…俺はあなたを抱きしめたい』
(っ…!)
限界だった。テレビを消して、咄嗟に耳を塞ぐ。
完璧な好青年。完璧なヒロイン。
これでこそドラマだ。完璧じゃないヒロインなんてヒロインじゃない。
太輔はオレとのドラマを望んでくれたけど…欠陥品のオレが相手じゃ、ドラマとして成立しない。
やっぱり、太輔がオレに薔薇をくれたのは撮影に生かすためだったんじゃ…ないだろうか。
ふと視界に入ったテーブルに置かれた薔薇の花瓶が、オレをさらに惨めな気持ちにさせた。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時