ヒマワリの瞳・2 ページ13
優しい顔で花を見る太輔の横顔に、心臓がぎゅっときしむ。
太輔は眩しい人だ。
オレと同じ傷を負ったのに、オレとは正反対の、光に愛された人。
(…羨ましい)
右の親指に、ピリッとした刺激を感じた時だった。
「あった」
そんな太輔の声に顔を上げると、そこには見上げるほど大きいパネルが展示されていた。いろんな色や大きさの薔薇の花で、女優さんの顔が描かれてる。ドラマを見ないオレでも知ってるくらいすごく有名な、美人顔の女優さんだ。
「これが、太輔の知り合いの作品?」
「そうだよ。…すごいね、黒や水色の薔薇なんてあるんだ。着色したのかな?」
その声には、オレも首をかしげることしかできなかった。
黒や水色の薔薇…画像で見たり聞いたりした事はあるけど、実在してる色なのかどうかまでは知らない。オレの店にも入ってきたことはないし、こうして直接見たのも初めてだ。
「知らない。でも、綺麗だな」
「そうだね、どの色も鮮やかで傷もなくて、すごく綺麗。まるで渉みたいだね」
「…は?オレが…何みたいって…?」
まさか女優さんなわけはないし…じゃあもしかして…と眉を寄せる。ご機嫌そうに開かれた太輔の唇が
「もちろん薔薇の花だよ」
と、ある意味期待を裏切らない台詞を吐いてきた。やっぱりか。
「似てるわけ、ないだろ」
思わず、尖った声になる。
どれだけ太輔の目にフィルターがかかってたって、それはさすがにない。
こんなに綺麗に傷ひとつなく大切にされて、切り取られたあとも光に照らされてる美しい花と、オレが似てるだなんて。
お世辞だとしても見え見えすぎて、まったく嬉しくない。
不機嫌を露にして言ったつもりだったのに、太輔には響いてないみたいだった。
「そうかな?渉そのものだと思うんだけど…」
なんて、不思議そうに呟いた。
まだ言うか。と、少しイラッとする。
「…じゃあ…たとえば、どこだよ」
「全部だよ。存在感のある美しさとか、スッとのびた細い茎とか…固くて小さな棘、とか」
「棘?」
「渉も持ってるでしょ。刺。…ああ、持ってるっていうよりは刺さってる、かな」
太輔は、オレをまっすぐ見つめてきた。肉厚の唇が自信ありげに笑みを刻む。オレの醜い部分を言い当てられたみたいで、全身の産毛がぞわりと逆立った。
「…っ」
なんで。
強くそう問いかけたオレのまなざしは、一瞬でくるりと変わった太輔の眩しい笑顔に拒絶されてしまった。
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風華(プロフ) - ソフィアさん» 二人のお話を見届けてくださり、ありがとうございました。コメントもありがとうございます(*´▽`*) お互いの求めるものや背負った傷の違いが成り立たせる二人の関係を、少しでも描くことができていたら嬉しいです(^-^) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - なかのさん» 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!更新は不定期ですが、作品の執筆自体は続けていくつもりですので、また見つけてくださった際は是非よろしくお願いします(*´人`*) (2021年5月10日 12時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - わたちゃんのピンと張り詰めて今にも切れそうなのと、たいちゃんのところどころ擦り切れてやっぱり切れそうな二人の心の糸が寄り添うことで、切れることなくしなやかに輝きを放っていくかのようなお話で素敵でした。ハッピーエンドで良かったです。 (2021年5月9日 21時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
なかの(プロフ) - 凄く素晴らしいお話しでした。毎回更新が楽しみで夢中になって読んでいました。また、お話し楽しみにしています。 (2021年5月9日 13時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - はしもとさん» コメントありがとうございます!今回の設定、気に入って下さってすごく嬉しいです( ;∀;) 他メンの事にも触れていただいて…yさんとわちゃわちゃお仕事してる風景を想像した時に、この二人が似合うかなあと思いました(。-∀-) いつも本当にありがとうございます♪ (2021年2月26日 23時) (レス) id: e81894f7b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風華 | 作成日時:2021年2月21日 16時