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少女は目を開けた。 ページ21

どのぐらい、眠っていたのだろう。

眩しいぐらい真白い天井に、鼻をつく消毒液の匂い。

ゆっくりと体を起こす。長すぎる睡眠時間後特有の倦怠感が不快だった。

窓の外は晴れ。個室らしく、室内にあるのは簡素なベッドとチェスト、テレビ、そして____


「………なんだこれ」


窓際に所狭しと並んでいる、見舞い品と思しきモノたち。


「えーと、お餅が太刀川さん、ゴディバが唯我、このチョコレート詰めは………三輪隊か」


三輪らしい几帳面な字で書かれたメッセージカードがあった。

『またチョコレートやるから早く退院しろ』。


「ぼんち揚げは迅さん、柿ピーチョコ掛けが多分緑川………」


一つの品で、目線が止まる。


「…………………蜜柑緒庫零十」


ネタとしか思えないような名前のそれは、字面通り蜜柑が緒庫零十でコーティングされたものだった。

蜜柑は彼の好物で、チョコレートは私の好物。


「いずみ」


そうだ。

彼はどうしているんだろう。

近界民の三門高校襲撃から何日が経ったのかも分からない。

あの青い繭のようなものを破って出て、夢中で孤月を振るったのは覚えているのに、決着はどうやって着いたのか、自分がどうして病院にいるのかを覚えていないことに気づいた。

背中を冷たい汗が伝う。




もしかしたら、何年も独りで懇々と眠り続けていたのかもしれない。






何年も。



「…………………」


病室の床にしゃがみこんだ。

これからどうすればいいんだろう。



もしかしたら、出水はもう…………









ばささ、と音がした。

扉の方だった。

少し色素の薄い髪。

いたずら好きの猫のような目。


「A!」


次の瞬間、体が温かいもので包まれた。

抱きしめられている。

ああ、彼の体温だ。

温かい。





「出水」









これから→←うわあああああああああああああああああああああああああああああ



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藤見日和(プロフ) - あぐおう。そだった……。いいねいいね、太刀川さんと鋼くん (2016年9月26日 19時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
久城墨香(プロフ) - 隠岐くんはだめだよぉー。ネタバレですやん。太刀川さんと鋼くんは!? (2016年9月26日 16時) (レス) id: 696e4784d7 (このIDを非表示/違反報告)
藤見日和(プロフ) - うぬーん………あ!! 隠岐くんがいい (2016年9月26日 13時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
久城墨香(プロフ) - 藤見日和さん» 解説、誰がいい!? (2016年9月25日 19時) (レス) id: 696e4784d7 (このIDを非表示/違反報告)
藤見日和(プロフ) - レムレムさん» あいーっす! (2016年9月5日 0時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤見日和 | 作成日時:2016年7月16日 7時

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