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「葵ちゃんて、誠知と付き合っとるん?」
「…えっ、と」
いつも誠知くんを見て、大きいなと思うけれど、柳田悠岐選手は体格もあってか、さらに大きかった。そんな柳田選手は、私でも知っていた。ホークスの顔、と言えるようなひとではないだろうか。
いざ出会って見たら、なんだかとっても豪快なひと。特徴的な話し方で、初対面の壁なんてないかのように、ずばずば話しかけてくれる。
「は、はい。お付き合いさせてもらってます」
「うわー、ほんま?ええなー」
「…柳田選手、既婚者でしたよね?」
「そうじゃけど、葵ちゃん美人じゃから、あいつ羨ましい」
大きく笑って、柳田選手は私を見つめた。意思の強い瞳にどきっとする。このひとは、すごく絵に移しやすいひとだ。周りにきらきら、光が見える。ヒーローっていう言葉が似合うひとだと思った。
「どっちから告ったん?」
「……」
「だんまりなーし!」
「……お仕事に集中してます」
「うわ、ずる!逃げた!」
どうしよう、距離の縮め方が上手で、ペースが波に飲まれていく。描きながらも少し動揺していると、扉をノックする音が聞こえた。
あ、よかった、少し助かった。これ以上、誠知くんとのことを聞かれたら、恥ずかしくて仕事にならないところだった。
「あ、咲」
「お仕事中、失礼します」
「なんじゃ、どーしたん?」
「え?柳田さんが葵さんに、ちょっかい出してないかって心配になって、」
「まだ出しとらん」
「まだって!奥さまが悲しみますよ」
「美人なひとに美人て言うくらいええじゃろ」
扉から入ってきたのは結城さんだった。フワフワしたスカートが今日もよく似合ってる。
結城さん、どうしたのかな。そんなことを考えながら、ふたりの話を微笑ましく聞いていると、結城さんははっと私の方を見た。
「ごめんなさい、集中切らせてしまいましたよね」
「いえいえ、大丈夫です」
「本当ですか?ならよかった…。実は葵に、今後の日程で伝え忘れていたことがあって」
胸ポケットからちいさな手帳を取り出し、綺麗な指先がペラペラと捲る。それをぼんやり眺めていると、結城さんがふと手を止めた。
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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです*楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…!意識している部分でもあったので、嬉しいです*そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています* (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています! (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月28日 23時