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「せ、いじく」
「…すきっす」
「え?」
「すきです、」
「…うん」
「……」
「私もね、すきだよ。誠知くんのこと」
「…ん」
「私で良ければ、隣にいさせて…、」
そう、願う言葉は、誠知くんに抱きしめられて消えた。力強く抱きしめられて、後頭部に大きな手が回る。痛いくらいなのに、縋るように見えたから、切なくなった。
大きな背中に掌を回すと、少し力を緩めた誠知くんと目が合う。ふ、と零れるように笑って、額と額が優しいぶつかった。
「一目惚れ、叶った」
「え?」
「あー、ずるいわ。ほんと、」
「なんで、」
「葵さんはかわいすぎです」
「…え……」
「…固まった。笑」
「だって、急に」
「…葵って呼んでい?」
「…え……?」
「固まりすぎ。笑」
「突然で、びっくりして」
「許可取ってたら遅くなりそうだから、勝手に呼ぶわ」
「な、なんか誠知くん、オラオラするね…!」
「オラオラ?」
「思ってたより、男っぽいというか、積極的というか、…慣れてる」
「全然慣れてないわ。久しぶりすからね、彼女できたの」
「うそだあ」
「あ、でも俺、子どもの頃から、好きなひとはいじめたくなるタイプかも」
「え…」
「これから楽しみっすね」
悪戯に口角を上げた彼を、不覚にもかっこいいと思ってしまった。呼び捨てにしたいというのに、時々出てくる敬語とか、不器用さが滲み出ていて、かわいいなとも思う。
結局、振り回される気がして、それが少し楽しみだったりする。
「誠知くん」
「ん?」
「お手柔らかにね」
「はーい、笑」
「…やる気のない返事」
「そんなことない」
「…いろんな誠知くんが見えて、これから楽しみだなあ。嬉しい」
そう、俯いて。お気に入りの革靴を見た。あ、少し汚れてる。そんな余所見をしていたら、誠知くんが急に黙ってしまっていた。どうしたの、と心配になり隣を見ると、両手で顔を隠していた。
その手の下の顔が見たいな。そう思って、大きな手に自分の手を重ねて引っ張ってみたけど、ビクともしない。
「いや、本当に、見せられないくらいにはニヤついてるから、やめてください」
ああ、本当だ。耳が赤い。
これからどんな誠知くんが見れるんだろう。楽しみがたくさんで、明るくなってしまう。グラウンドに立っていた彼は、こんなに可愛らしくて不器用なひとだった。
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aoi(プロフ) - みゆうさん» こちらこそです*楽しみにしています。 (2019年3月5日 1時) (レス) id: 1e8b3648c1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさん» 見てきただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2019年3月4日 22時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みゆうさん» とてもありがたいお言葉ありがとうございます…!意識している部分でもあったので、嬉しいです*そして実は私、みゆうさんのおはなし拝見させてもらってます。私こそ更新楽しみにしています* (2019年3月1日 0時) (レス) id: ddb827d49e (このIDを非表示/違反報告)
みゆう(プロフ) - aoiさんの書く小説、主人公の見ている景色や生活の雰囲気だったり、想像力が膨らんで、心がほっこりする言葉の使い方が凄く好きです。更新楽しみにしています! (2019年3月1日 0時) (レス) id: faf8ae436c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月28日 23時