影山君と青城マネちゃん[HQ]

31*不覚な高鳴り ページ32

｢駅員さ〜ん、不審者がいまーす。｣

｢ちょっ、やめて！｣

本気で通報する気はないけど、無駄に焦ってくれるから及川さんはとてもノリが良い。

それよりも夕方の帰宅ラッシュと被っているのかホームには人が沢山いる。


｢岩泉さんは？｣

｢もう帰ってるんじゃない？
Aはお買い物？」

｢春服欲しくて友達と買い物してました。｣

｢どんなの買ったの？及川さんにも着て見せてね。｣

｢色気を出したくて胸元空いてるのを買いました。｣


冗談なのか本気なのか迷っている顔をしていて、とても面白い。
先輩相手にからかえるのはこの人の人柄のお陰もある。流石に岩泉さんに私は冗談を言えない。

｢お母さん悲しい!!
Aをそんなハレンチな子に育てた覚えはないわっ！｣

｢…育てられた覚えもないです。｣

｢ちょっとA〜そんな服着て誰誘う気？色気づいてんじゃないよ。
発育の暴力のお陰で胸見せなくてもおっきぃってわかるよ？｣


及川さんにはやっぱり岩泉さんとか聞き役の金田一を添えなきゃいけない。
飛雄とか国見が大人しいからこんなにマシンガントークで来られると大変だ。

私の思いが伝わったのかホームに電車が停まる。
降りる人よりも乗る人のほうが多くて、文字通り満員電車。

部活帰りはもう少し遅い電車だからここまで混んではいない。


｢A、こっちおいで。｣


クイッと腕を引かれ壁際に背を預ける形になるも、目の前には及川さんが居てくれるから人の圧からは守られているが

｢…これが所謂壁ドン。
今はとても有り難いんですけど、壁ドンとか普通に女の子にするんですか？｣

｢時と場合によるかな☆
…あとね、痴漢とか騒がないでね!!人多すぎて及川さんも不可抗力だからっ！｣

0cm、寧ろマイナスの距離に居るから胸を押し付ける形になっている。
…少し顔を上げれば、及川さんと目が合う訳で。


｢…｣

｢ごめん！
もう少し我慢してね！｣


不覚にも抱きしめられてる様な感覚に陥るし、分かっていたけど無駄に顔が良くて、緊張してしまう。
いやぁ、本当に顔が良い。


｢外雨だけど傘あるの？｣

｢忘れてきたので自転車飛ばして帰ります。｣

｢ちょっと女の子！
俺傘あるから、送っていくよ。｣

｢遠回りになっちゃうから、申し訳無いです。｣


断ってもきっと送ってくれるんだろうな…なんてこの人の得意げな顔を見ていた。

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