【マフィア松】ハッカー少女、誘拐しました

35 ページ36

遠くからバタバタという足音と、銃声の音が聞こえる。それ以外にも怒鳴り声のようなものも聞こえるが、閉じられた扉からその内容を伺い知ることはできなかった


ガチャッ！


暫くすると、突然勢いよく扉が開き、冷静さに欠けた男が入ってきた


後ろ手に扉を閉め、乱暴に鍵をかける


そしてズンズンと私に歩み寄り、私の前髪を掴んで引っ張った


『うっ…』


痛みに顔を歪めるが、そんなこともお構いなしに男は私のコメカミに銃をつきつけた


カツカツカツ……


複数の足音がする。どんどん近づいてくる


誰…？


男の汗が地面に落ちた。その瞬間


バンッ！！


扉の一部…真ん中より少し上あたりが靴の形に凹み、扉がこっち側にふっとんできた


見慣れた色


あぁ…貴方達は、いつも私を助けてくれる。守ってくれる


今もまた、私のことを優しい目で見つめて……


お「Aちゃん、怪我は？」


優しい口調で問いかけてくる


『ないです…ッ』


男が私の前髪を更に強く引っ張る


男「銃を、下ろせ…さもないとこいつを」


お「おい」


男「ッ」


男は蛇に睨まれた蛙のように身を縮こまらせる


いや、これは確かに怖い。凄い形相で睨んでくる皆さんは、鬼も裸足で逃げ出すんじゃないかって程の迫力だ


特におそ松さん、最強マフィアのボスはまず風格が違う。威圧ハンパない


お「汚ねぇ手でその子に触るな」


男「くっ…」


って…あれ、一松さんいなくね


ト「その子、さ。僕らの大事な子なんだ」


十「あははっ楽に死ねるーとか、思ってないよね？？」


チ「女の子人質とかマジあり得ないから、そんなゴツいので拘束までしてさぁ…ただで済むと思ってんの？」


カ「俺達の大切なAを誘拐した罪は重いぞ？」


皆さんが口々にそう言う。男を睨みながら、ドス黒いオーラ…殺気を纏いながら


お「返してもらう」


おそ松さんもいつものおちゃらけた雰囲気と口調からは一変、もうすっかり本気モードだ


男の顔が恐怖に歪むのが何となく分かった


その時


パァン！！


男「あ"あ"あ"あ"あ"！！！」


『え…』


男が肩を抑えてうずくまった


夥しい量の血が溢れ返って、床も同じ赤に染めた


皆さんは銃を握ってはいるが、発砲はしていない


じゃあ今の弾丸は一体誰が…？


……あっそうか


私は部屋の窓を見た。窓の一部には丸い穴が空いていて、少しヒビが入っている


窓の外の離れた木を見つめた


上手く木の葉に身を隠した一松さんの手には、細く煙を吹くスナイパーライフルが握られている


彼、か

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す