【マフィア松】ハッカー少女、誘拐しました

32 ページ33

『う…』


くそ。何処だ、ここ


起き上がろうとするが、手足に枷がつけられていて身動きがとれない


あ、これなんかデジャヴ。松野ファミリーに捕まえられた時も確かこんな感じだったなぁ…


皆………


私は部屋を見渡した


家具が無いシンプルな部屋。あるといえば枷の鎖を繋いでおく棒のような物


ここは元々、そのための用途しかない部屋だ。多分


っと……あれは監視カメラか。てことはそろそろ…


ガチャッ


うん、今のはフラグだったね。何自分でフラグ建ててんだろ。しかも限りなく死亡フラグに近いやつをさ←


私を見下ろす男は、私を眠らせた奴に違いなかった


男「ご気分はいかがですか？」


あくまで丁寧な、紳士的な口調でそう言う男。まぁチンピラの馬鹿っぽい喋り方よりマシだな


『最悪ですよ。こんな物騒な物つけられたら』


男「申し訳ない。松野ファミリーは貴女をとても大切にしているようなので、近々誘拐するつもりだったんですが、貴女が自らこちらに来てくださったので手間が省けました」


『人質ですか？』


男「はい。明日、松野ファミリーにお電話をかける予定です」


チラッと窓の外を見ると空が真っ暗だった。もう夜か


なんとか逃げ出す方法を考えないと……でもその前にこの枷をどうにかしないと何もできない。ダメ元で腕に力を入れるが、当然枷はビクともしない


男「逃げようとしても無駄ですよ。それは貴女に壊せる代物ではない。それに屋敷内には数十人の男が見張っている」


何処にも逃げ場などありません。大人しくしていてください


そう言い残して男は部屋を出ていった


『畜生……』


小さく呟く。結局私は無力だ


こうして一人、助けを待つことしかできない


………いや、助けなんて来なければいい


確かにずっとここにいるのは怖い。何をされるのかも分からないし、いつ殺されるかだって………


でも、皆が傷つく方が何倍も、何十倍も怖い


私は松野ファミリーの一人一人の顔を思い浮かべた


だからお願い


来ないで

33→←31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す