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「ただいまー」
家に着いてそう言う。母さんから返事がくると思ったが、違った。
「おかえり」
ドアを開けてひょこ、と顔を覗かせ、赤葦先輩、……兄さんがそう言う。
何故いる。それが1番最初に言いたい事なのだが、それよりまず。顔を覗かせて？女子ですか、そうか女子なのか。
そんな事を心の中で思うと、笑い出しそうになるが、グッと堪えて言う。
「兄さん、何でいるんですか……」
兄さんはその言葉に対して、
「あ、呼び方変わった。敬語も外していいのに、家だし」
関係ない事を話し出したため、靴を脱ぎながらジト目で見つめる。
すると苦笑いをしながら「分かったから、言うよ」と言って話し始める。
「優さんに魔法教わりに来たんだよ。元々魔導士だって聞いたから、それで」
母さんを優さんと呼ぶ人は滅多にいなくて、一瞬誰の事か分からなくなる。
「ああ、なるほど。……帰らないんですか？」
「夕飯だけご馳走になるんだけど…………Aは俺に帰って欲しいの？」
「はは、まあそういう訳では無いんですが」
何故そこまで長居する必要があるのかが知りたかっただけだ。夕飯食べてくなんてね、知らなかったしね。
「でさ……」
そう話を切り出そうとした赤葦先輩になんですか、と言おうとする。が、それは言えずに、肩を強めに押されて、そのまま壁に叩きつけられる。
「なんで魔力隠してるの？……バレたくない事でもあるの？」
「…………分かってるでしょう？」
目を逸らしてから、また兄さんの方を向いて言う。
次の瞬間、頭に強い衝撃が走った。
頭を抱え、壁に寄りかかりながらしゃがむ。そのまま、何もかもが自分の体の外から出ていって＿＿＿＿＿＿＿＿
…………戻ってくる。
「……おかえり、A」
上を向くと兄さんは笑っていた。おかえり、という言葉には恐らく先程答えたのだろうから、答えずに今1番言いたいことを口に出す。
「荒療治すぎませんか？引っ込めて引っ張り出すのにそこまでしなくても……」
その言葉に、兄さんは声を出して笑う。
「はは、でも優さんにこんくらいしていいって言われたし」
母さん…………。いくらなんでも死ぬ。
人は死ぬよ、母さん……。
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作者名：凛花 | 作成日時：2017年1月9日 16時
