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「ああぁぁ！もう、ふざけてる場合じゃないって」
及川が叫ぶ。耳を塞いで、澤村はジト目で及川を見た。
「つーか、こんな所で俺らだけでいても意味無いだろ」
「それもそうだな。とりあえず1年の教室行くか？」
澤村の提案に、2人は頷く。
澤村が転送魔法を発動させようとすると、及川がそれを止めた。
「一応魔力を温存しておこう。思いがけない戦闘が始まるかもしれないから」
それに2人は同時に頷いて、澤村は魔法の展開を止める。
3人はこの学校でのエリートだ。3年間Aクラスの地位を守って、有力な魔法騎士候補となっている。実戦では他の3年に負けた事はないという。
が、それでもきっと世界の滅亡は止められない。人じゃないものが溢れかえり、それに人が抗おうとしてもそれは無謀でしかないのだ。
3人は、歩いて1-Aの教室に向かった。
ドアノブを握り、ドアを開ける。他の学校では見ることはない、押して開ける式のドアだ。
中にいた1年、それから2年も3人の方を向く。まだ全員は集まっていなかった。
及川はその全員に目を向けず、ただ1人の人間を睨みつけ、歩み寄った。
「研磨くん。なんで言わなかったの」
自分の席ではないはずなのだが、椅子に座ってゲームをしていた研磨を見下ろして言う。ゆっくりと上を見上げ、いつもと変わらない表情で口を開いた。いや、多少嫌な顔をしているようにも見えるが。
「……別に。言ったところで何も変わらないでしょ」
確かにそれは当たっている。誰かに前もって言っていたとしても、それは根本的な解決にはならないはずだ。世界を滅ぼす張本人を捕え、閉じ込めてもどうせ変わらない。
殺して計画をなかったことにしても、どうせ違う誰かが同じ野望を持つ。
なら、どうすれば良いのか。答えは一つ。ただ滅亡を待つだけだ。
「確かにそうだね。でも、君が言わなかった理由はそれだけじゃないでしょ」
研磨が言わなかったのは、言ってしまえば禁忌のようなものだ。
「なぜ、夕闇燈を庇う」
反逆者を庇う、禁忌。
犯罪者に自らなるようなものだからだ。
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作者名：凛花 | 作成日時：2017年1月9日 16時
