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「A」
日向くんに名前を呼ばれて、そちらを向く。
「えっとさ、あの、さっきはごめん……なさい。信じられなかったっていうか、その」
言いたい事がまとまってないのか、口ごもりながら言葉を繋いでいく日向くん。
「うん、平気だよ。ああなるのは正直予想内だったし」
そう言うとえっ、と言った。その顔が面白くて、つい笑ってしまう。
「日向ー!!Aー!!早く来いよ!」
菅原先輩が大声で名前を呼んだ。
名前叫ばないでくれ……。恥ずかしいから。
「日向くん、行こう」
「おう!」
日向くんは笑顔になって菅原先輩の方に走っていく。それと入れ替わりのようにテツ先輩が横に来た。
テツ先輩を見上げて、少し首を傾げる。
「どうかしましたか?テツ先輩」
そう声をかけると私を見下ろしてテツ先輩が言った。
「いや、別に?Aの隣の方が落ち着くしな」
「……へ」
予想外の返答に間抜けな声を上げる。テツ先輩はその返事が面白かったのかそれとも確信犯か、ニヤニヤと笑っていた。
声にならない声を上げて、そっぽを向く。少しだけ、顔に熱が集まるのが分かって、下を向く。
「ふ、悪い悪い」
「……笑わなかったら許してました」
ほんと、なんなんだろう、この人。
友達や先輩と出掛けたことなんかないからどうしたらいいのかただでさえ分からないのに、こういう事言われると……。
「どういう顔したらいいのか、分かんないや」
ボソッと、テツ先輩にも聞こえないように、小さい声で呟く。
「なんか言ったか?」
「いいえ、人の顔見て笑う人には教えませーん」
そう言うと、テツ先輩は声を上げて笑った。
なんか、楽しいなって、心から思った。こんな、平気ボケしてる場合じゃない事ぐらい、知っていた。
だって、もう1度この世界は滅びるから。
____いや、私がこの手で、滅ぼすんだ
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作者名:凛花 | 作成日時:2017年1月9日 16時