見初められたは良いんだけど私には荷が重すぎたようで 【鬼灯の冷徹】

面倒なんだ ページ5

カリカリと無機質な音が部屋中に響く。

いい加減目が疲れてきたので、一旦筆を置いて伸びをした。その際に体の関節が音を立てたのは、まあ、ご愛嬌。

そろそろ渡された書類が一段落着きそうだ。主任に渡しに行かなければいけないのだが…

ぶっちゃけ、面倒なんだ。

いや、面倒というか、私のような死んだ魚以下の生物を皆様の視界に入れて頂くとか、そんな大それたことが堂々とできるほど私の精神は強くない。

むしろ弱い。驚くほど弱い。多分カブトムシの方がまだ強い。

主任からこっちに来てくれないかな〜、とか考えていると


ノックの音がした。


あまりにもジャストタイミングだったもんだから驚いて近くの書類タワーを崩してしまった。

やばいやばいやばいやばいどうしよう。

扉越しに待っててと声を掛ける？答えはNOだ。

私のカブトムシ以下のメンタルパワーでそんな失礼なことが出来るわけがない。

ああもう、混乱しすぎだろう私。

自己嫌悪に陥りそうになったとき、扉が開いた。

失礼します、と声があったけれど、絶賛パニック中の私にはわからなかった。

その声が、主任とは違うことに。


これが、私と《彼》との出会い。

鬼「…えーと」→←鬼「失礼します」

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