14話 ページ15
知らない。ぼくは何にも知らないのだ。
こんなことが現実にあると言うことも、何故この人間がぼくの手を取りぼくを連れ出したのかも、この手の温もりが本当のことかすらもぼくは知らなかった。
あの日焦がれた温もりに触れて、冷たいぼくに熱が通う気がした。吸い込まれるように夕陽に向かって走るぼく達の後ろには影しかいない。あの村から離れるように何処へ行くのかもわからぬまま、人間に付いて行くようにして走れば夜が影を隠して、まるでぼく達の味方をしてくれているみたいだった。
強く握られた手に肩が跳ねる。少し痛いくらい握られた手に、これは本当に本当の出来事であると実感できた。少し痛いけど、それ以上に温かい。ぼくとって初めての温もりだった。
そこでぼくは思い出す。あの夕焼けに照らされた親と子の様子を思い出したのだ。あの人間は手を繋いで嬉しそうにシアワセそうにしていた。今、この感情がシアワセというのか、それはわからない。もしそれをシアワセとしたならば、これがぼくとっての初めてのシアワセなのだ。迫害の毎日を繰り返していた人間が、ぼくの初めてのシアワセの相手なんて可笑しくて笑ってしまいそうだ。
今思ってしまったことを素直に口に出してしまいそうになる。簡単なやつだとぼくだって思う。だが、いつも死にたかったぼくが思ってしまったのだ。
この人間なら信用してもいいのかもしれない。この人間となら生きてもいいのかもしれない。と。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年6月2日 16時