0.1 変わった奴 ページ2
××××
『暇だ』
ある町の遥か上空を
ふらふらと飛びながら
そんなことを喚いていた
この600年間人間界にいるが
平和すぎてつまらない
たまに起きる戦争や反乱も
悪魔の出る間もなく数十年で
終わってしまうから
退屈しのぎにもならないのだ
『お腹すいたな…』
ちょうど小腹が空いたから
気分転換にすぐそこの森へ
着陸する
辺りには誰の姿もなく
いるのはリスやネズミだけだった
当たり前か…
町から結構離れてるし
木に成っている林檎を一つ
ちぎってかじる
『味薄っ…』
人間界の食べ物は味が薄い
これなら薄汚い政治家の
心臓の方がまだ美味しいな
「あれ?おかしいな…」
『!?』
ふと人間の声がした
こんな森の奥地でしたもんだから
驚いて手にもっていた林檎を落としてしまった
「こっちで当ってると思ったのに…あれ?」
『しまった…』
「君は…」
声がしただけで驚くとか
何年この″仕事″やってんだよ…
人間がじっとこちらを見ている
あの服…ファウストの奴か
また厄介なのに会っちゃったな…
「もしかして…あく…ま?」
『そうだよ…不運だった…』
「良かった!」
『…は?』
怯えた様子もなく笑顔でそういう
悪魔が目の前にいるのに何言ってんだ
「僕道に迷っちゃってさ…」
『はぁ…』
「よかったら案内してくれないかな?」
『…』
悪魔に道案内しろとかおかしいでしょ
危機感無さすぎてこっちが心配だ
『私悪魔デスケド…』
「?…知ってるよ」
『魂取られるかもとか思わないの?』
「思ってない訳じゃないよ」
『じゃあ何で』
「君なら大丈夫って思ったんだ」
頭イカれてるんじゃないかって思った
もしかしたら町に誘導して
殺されるんじゃないかとも思った
でもそんな顔で言われたら断りずらい
『正気?』
「正気だよ」
『はぁ…好きにすれば』
「…!!」
しょうがなく妥協すれば
人間の顔がより笑顔になる
あるはずのない良心がキュッと
締め付けられたように痛かった
「それじゃあよろしくね!」
『はぁ』
悪魔が人助けなんて上に
知られたらおしまいだな…私
「あ…そうだ!」
『?』
人間が振り向いてこちらに
まぶしい笑顔を向ける
「僕チョロ松…よろしくね!」
『まーたそうやって…』
「え?なに?」
知らない奴しかも悪魔に
名前教えるとか…
変わってるな…コイツ
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カレー | 作成日時:2018年8月11日 16時