53 トラウマの事実 ページ3
『はい』
『こ、れ……昇……』
昇は微笑んだ。
俺のペンを差し出しながら。
……きっと、俺にはこんなことできなかった。
自分の命を守ることに必死で、こんなペン、俺だったらとることができなかった。
だけど、昇は違ったんだ。
『柊太の大切なものでしょ? 』
――――――――
「……そう、言って、昇はどんなに流されようと、
俺のっ…ペンだけは、離さなかったんだ…」
私は何を言えば良いのか、分からなかった。
経験した人にしかわからない、痛みがある。
だから、無理に言葉をかけて、今開いてしまった傷口を、
更に広げたりなんてしたくなかったんだ。
「それで、あいつ、お人好しで、優しいやつだったから……。
小学あがって、高学年になったとき。
俺のせいで昇が足を怪我したっていう紛れもない真実のうわさが流れて…。
それでも、あいつ俺の事かばってきたんだよ…。
俺が、俺が悪いのに……。
それが、すごく苦しかったんだ…。
俺、何もできずに、むしろ、俺が原因なのに、
何もできなくて、昇に守ってもらって…。
もう、すごく、すごく苦しかったんだ……」
柊太が大粒の涙を流しながら、一言一言、自分の心を露わにしていった。
そして、その話を聞いたうえで、私は一つの確信を得た。
この話は、
この話はきっと、
アイドルになる前におこった、高校での出来事と、
――繋がってるんだ、
と。
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流華 - ネクロさん» 感想ありがとうございます!!久々にうらつくを開いたらコメントあって嬉しいです涙 (2021年6月27日 20時) (レス) id: c141522df8 (このIDを非表示/違反報告)
ネクロ - 今1を読み終わった所です!2が楽しみなので、早速読んできます! (2021年1月2日 20時) (レス) id: acc1702ca8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 x他1人 | 作成日時:2014年3月23日 22時