それ違う物語やね ページ5
『ヴァイオリン?』
夕飯と入浴を済ませベッドで寛いでいると携帯に1通の着信がきた。
「そう!征ちゃん今週コンクールがあるらしいのよ」
以前赤司の家に泊まった時のことを思い出した。
何のコンクールかは知らないが、楽器らしいものは見当たらなかった。
『?、何のコンクール?』
「ヴァイオリンよ。征ちゃんすごく上手いのよ!何回も賞取ってて実業団からスカウトが来るくらいでね、それで…」
高まりを抑えきれない実渕を他所に、Aは又もや考え事をしていた。
「じゃあ乗馬が出来るのも知らない?」
『うん。知らない』
--赤司財閥の御曹司ってぐらいしか知らんし--
「えっ、うっそやだ。
コンクールは土曜日にあるから、良かったら一緒に見に行きましょう?」
『え、あ。うん。行こっかな』
そんなこんなで土曜日の予定が埋まって楽しみが増えたと気分が弾んだ。
--一緒に帰れないのコンクール近いからか--
最近、部活が終わっても「すまない。先に帰るよ」と言ってすぐ帰ってしまう赤司に少し疑問を抱いていた。
そんな事情があるともなれば納得がいき、疑いを持ってしまっていた自分に情けなさを感じた。
実渕との通話が切れ、携帯のスケジュールに予定を埋め込んでいると突如ドタドタと階段を駆ける音が響いた。
「お姉ちゃぁん!!!」
『こら沙燈。階段走ったらダメっていつも言ってるやろ』
階段をこんな風に上がってくるのは沙燈しか居ないと分かっていたAはドアが開く前に、ドアの方向を見ていた。
ゆっくり慎重に階段を上り下りしていても足を踏み外して落ちてしまうことがある故に、Aは少し口調を荒くして沙燈を叱った。
「あ…ごめんなさい」
『どうしたん?』
ドアの辺りでシュンとする沙燈にベッドをポンポンとしながら問いただすと、パァっと明るくなり飛んでAの方へダイブした。
「じゃーーーん!!!」
手に持っていたのは童話集の絵本だった。
「お姉ちゃんこれ読んでほしいの!」
『ちゃんといい子に寝る子は手をあげてー』
「はぁい!」
勢い強く高く手を挙げた沙燈は「はやく!はやく!」と待ち切れない様子でAの膝の上に座った。
『どれ読んでほしいん?』
「これ!!」
指さしたのはお馴染みの狼が出てくるアレ。
『ほんと好きやね』
「うん!王子様がかっこいいの!」
『それ違う物語やね』
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一葉(プロフ) - とても面白いです! (2022年8月17日 11時) (レス) @page8 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
渡邉さくら(プロフ) - 全然載せて大丈夫(*´∀`) (2021年8月27日 7時) (レス) id: 074210af70 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - 真柴白さん» ありがとうございます〜!そこのギャップが良いなぁと思って捏造もあったりなんですけど、ぼちぼち更新して行くのでよろしくお願いします! (2021年2月2日 22時) (レス) id: 2c4f147fea (このIDを非表示/違反報告)
真柴白 - 赤司が、嫉妬想像出来ん。冷静沈着だけど、少し熱い男子だからホウホウそう来るかと、思った。 楽しかったO(≧∇≦)oので、更新楽しみにして待ってます☆ (2021年2月1日 6時) (レス) id: b8cb4c9ad0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蛍 | 作成日時:2021年1月15日 11時