これは一体なんなんだ ページ27
はて、どうしたものか
屋上を去る時Aは咄嗟に僕に弁当を渡してきた
今僕の手にAの弁当があるのだが
中身もまだ残っている
「赤司、それどーすんの?」
「どうするもなにも…」
困った
食べてはいけない気がするし
かと言って永吉や小太郎に渡せば全て食べてしまうだろう
そうなればAの分がなくなり餓死ということに…
いやそんな馬鹿な
人間が1食分抜いたところで餓死なんてするわけない
「じゃあ、これAに届けに行けばいいんじゃねーか?」
「あ、それあり!俺が持っていくー!!」
「待ちなさい、みんなで行くのよ。もうみんな食べ終わってるし、時間的にもう昼休み終わっちゃうでしょうが」
「うぃ。じゃあみんなで行こ!赤司も行くだろ?」
「あぁ」
Aの携帯から流れていた動画の音を聞く限り行ってはいけない気もするが
何故だか僕はどうしても気になった
友達がいじめにあっていてそれをどんな風に対処するのか
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『ごめんね、気付いてあげられなくて』
そう言ったAの顔は無表情だが僕には悲しそうに見えた
Aのクラスに行った時にはもう争いは収まっていた…はず
『私がいなかったら美炬を、なんて?
そっから聞いてなかった』
その声はとても冷徹だった
黒目のはずなのだが、赤みを帯びて見えた
「いや、違うのよ銀嶺さん?ね、みんな?」
『みんなは関係ないやろ、あんたに聞いてんの』
女子生徒の胸ぐらを掴んだAの眼には殺意を感じた
「あ、ごめんなさいね。もうしないわ、行きましょうみんな」
女子生徒はAの気迫にやっとの思い出絞り出した声は滑稽だった
人は恐れを成すとあのような声になるのか
『って、みんないるじゃん』
「Aが弁当置いてったから渡しに来たのー」
『あー、そうだっけ?ありがとう
っていうかいるなら言ってよ…思いっきり胸ぐら掴んだじゃん…』
少し罰が悪そうに笑うA
「なぁA?」
『ん?…あぁいいよ食べて』
「やった!ありがとA!』
少しだけAの弁当を食べてみたかったと思ったことは誰にも言えるわけがないだろう
『赤司もありがとう、来てくれて』
クラスに来ただけでお礼を言われるなど
今までにないな
「いいんだ、気にしないでくれ」
Aといると不思議な感覚に陥る
--これは…一体なんなんだ…--
次から2年トリオの過去編です
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作者名:蛍 | 作成日時:2019年10月18日 20時