今際の際 (ページ10)

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いくら体調が悪いからといって数日ずっと室内に居るのは心身共に良くないだろうと思い、気分転換にベランダの窓を開けた。

俺が住むのは高級マンションの25階。

それなりに高い位置から東京の街を見下ろすことが出来た。

「………わぁ…」

ベランダへ足を踏み出し、その景色に見とれる彼女。

部屋にいた時なんて青白い顔色をしていたが、少し血色が戻ったように見える。

やっぱり、外に出るって大事なんだと認識した。

「空がきれい…」

季節は11月上旬。

冬の澄んだ空気で青い空は普段よりも綺麗に見えた。

「…そうね」

そういえば、自分は何年空を見ていないだろう。

仕事場はもっぱらBARの中。

気づかれないように、何処からか刺されないように、下を向いて歩く日々。

天気を気にした事はあったけれど、わざわざ空なんて見上げたことも無かった。

「っくしゅ…」

流石に11月の風は寒かったようで、彼女が小さなクシャミをする。

そんな可愛らしいクシャミにも心臓がとくんと鳴る。

「部屋入ろっか」

「…はい」

クシャミが恥ずかしかったようで、えへへ…と彼女は笑った。