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不快な夢で目を覚まし、深いため息をつく。
ちゃんとしたベッドじゃなくて、寝心地の悪いソファーで寝るからこんな夢を見るのだろうか。
時刻は朝の6時。
彼女の様子が気になって、寝室を静かに覗いた。
「……ぁ…」
そこには、まだ苦しそうだったが起き上がっている彼女の姿。
現状が理解出来ていないようで、キョロキョロとしていた。
「っ…!!」
彼女と目が合う。
俺は持っていたスマホが手から落ちた事も気にせず、彼女に駆け寄ってその小さくて細くて…熱い身体をぎゅぅと力強く抱きしめた。
「ぅ…」
彼女が少し苦しそうな声を出す。
「良かった………良かった…」
まだ熱はあるけれど、起き上がれるようになっただけでも嬉しくて仕方がなかった。
あんなに頭を抱えて、胸を苦しくさせながら看病をしたのだ。
我を忘れてこの腕の中に彼女を掻き抱いてしまうくらいに安心してしまった。
「……ねす…さん……」
熱のせいか、寝起きのせいか、舌っ足らずな声が俺を呼ぶ。
「……ぅ………ねす、さんっ」
ポロポロと彼女は涙を零し、俺の服をきゅっと掴んだ。
それはまだまだ弱々しい力だったけれど。
「…っと…どうし…た?」
泣いてしまうような事があったのか?
何かから逃げるために、ここに来て酒を飲んだのか?
やっぱり聞きたいことは山ほどあった。
……それよりも今は、彼女の涙を止めたくて。
「……泣き止んでよ…」
抱きしめる力を弛めて、次から次へと溢れてくる涙を俺の手で拭う。
涙は全然止まらなくて、それでもどうしていいかわからなかった俺はその涙を拭い続けた。
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作者名:hoshina
作成日時:2023年5月6日 23時