今際の際 (ページ15)

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彼女の居なくなった部屋。

ポッカリとあいた心の穴。

それ等は簡単に癒えるものじゃない。

部屋のカーテンすら開ける気にならない。

締め切った、冷たい布団の中で幾日も幾日も、起き上がる気も起きずにいた。

布団の中にいても眠れる訳じゃない。

彼女の手がするりと抜けた感覚、地面に叩きつけられた音や姿は消えてくれない。

目を閉じれば、悪夢のように俺を襲う。

もう、全てが嫌になった。

1人の家なんて、少し前に戻っただけじゃないか。

そう言い聞かせようとしても、彼女のぬいぐるみや着替えが目に入ると涙が浮かんだ。

……戻る訳じゃないんだ。

そんな簡単な事じゃない。

両親と同じだ。

突然の別れ。

俺はまた、置いていかれたのだ。

あまりにも、突然すぎた。

彼女との出会いも、一時の別れも、再会も、今生の別れも。

ぜんぶぜんぶ、突然なんだよ。

今日もまた、ポロポロと涙を零しながら目を閉じる。