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ひゅ〜、と風を感じて振り返る。

ベランダの扉が開いていて、彼女がぼんやりと立っていたからだ。

「………A?」

呟くように呼んだ声に、彼女はゆっくりと振り返る。

初めて彼女に出会った時とは違う、少し元気の無い姿。

「………ネスさん」

彼女は柔らかく微笑んだ。

その表情は、儚くて、美しくて、俺は目を逸らせなかった。

「……楽しかった、私…」

「…………」

1歩、俺の足が出た。

このまま彼女が居なくなりそうだったから。

「………私、ネスさんの事……」





好きになっちゃった。






俺の足はベランダへと駆けていた。

ドタドタと大きな足音が鳴るのも気にせずに、そんなに距離の無いはずのベランダへ。

「さようなら」

そう聞こえたのは俺の気のせいか。

気の所為であってくれと願う。

この腕に掻き抱こうとして伸ばした手は空をきり、ベランダの柵の向こうに飛び立った腕をギリギリで掴んだ。

彼女の身体は柵の外でゆらゆら揺れる。

「………ッ!!」

「っ……わた、し……」

大好きなネスさんと一緒に過ごすことが、怖くなったの。

そんな自分が嫌で、過去を恨んでしまう自分が嫌いで。

「…ネス、さん。
………だいすき」

ニッコリと笑った、彼女の笑顔を見たのと同時に掴んでいた腕がするりと抜けた。

そこからの絶望や情景は、今でも言葉にしたくない。

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設定タグ:ネス , RAB , リアルアキバボーイズ   
作品ジャンル:タレント
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作者名:hoshina
作成日時:2023年5月6日 23時

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