9 ページ9
「お兄ちゃん、ここで何してるの?」
「本当は、かあさんをちゃんと見送らなければいけないんだ…でも、写真の中で笑っているかあさんを見たくなかった…」
いつもは心の中だけで思っていることが、不思議と自然に口から出た。
この子が相手だからだろうか。
知らない子だからこそ、この場限りの相手だからこそ、するっと話せたのかもしれない。
「…はは、ごめんな。こんなこと言ったって分からないよな」
「んー、なんのこと言ってるのかは分からないよぉ。でも、お兄ちゃんすごく悲しそう」
そう言って、女の子は僕のことをきゅっと抱きしめてくれた。
…夏だから暑苦しい。
けど、なんだか居心地が良くて。
自然と目から涙がこぼれてしまった。
「お兄ちゃんなんで泣いてるのー?」
「…なんも分かんないよ」
ぐす、と鼻をすすると、僕を抱きしめる力が少し強くなった。
「私はぁ、まだ五歳だから、お兄ちゃんの気持ちはぁ、分からないよ?だけどねぇ、いつか私がちゃんとした女の人になったらね、また慰めに来てあげるね!」
「…あり、がとう」
こんな小さな女の子相手に、僕はなにをやっているんだろう。
でも、僕の思っていること全てを吐き出せたから、こんな清々しい気持ちになっているのかもしれない。
思えば僕は自分の感情を凍らせて、じっと心を閉ざしていた。
自分のことを知ることができた。
…この小さな女の子に感謝だな。
17人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Leaf(プロフ) - フロチャから来ました。フロチャでは男の子が怖かったけど、この作品を読んだ後は何だか感じるものが違いますね。すごく素敵な作品でした。 (2019年1月14日 21時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
白猫のような(プロフ) - フロチャのストーリーに入り込みました! とても面白いです、更新期待しています! (2018年10月23日 21時) (レス) id: 2e8f40e4be (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柴葉ましろ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2018年10月21日 14時