■は■■まで。 / ゆきむら。 (ページ5)

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📕「バカ舌」ページ5

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　バタン。
　飲み物を取ろうとした時にそれに気がついた。

　冷蔵庫の扉の横にある飲み物よりも先に目線の先にあるラッピングされたそれ。形的に、ケーキやタルトではなく、箱に一個ずつ入ってそうなそれ。

　ゆきむらさんはスっと息を吸って一旦天井を見て心を落ち着かせる。

「……やばい、やらかした。え、待って。これぼくが悪い感じっすか」

　どうにかして自分を悪くしたくないゆきむらさんは思考停止しそうな脳をフル回転させてなぜ、こういう状況になったのかを考える。

　そう。まず飲み物を飲もうとして冷蔵庫を開けた。
　水とかお茶とか、別にジュースでもなんでもよかった、ゆきむらさんは。

　でも飲み物よりも先に目に入ってしまったのは、それはそれは丁寧に包装がされている何か。
　きっと、時期的にバレンタインのチョコレートだろう。

「……や。確かにチョコレートって冷やしとかなきゃいけないものだけどさ、」

　これでチョコレートじゃなかったパターンが怖いというか恥ずかしいが、もう一度、念の為にもう一度冷蔵庫を開ければ、なんとご丁寧に『ゆきむへ』なんてメッセージまで添えてあるではないか。

「え。こんな露骨に置く？？もっと。なんか。隠せよ。頑張ってくれよ、」

　ここまで大胆に置かれていると、むしろこれが正しいのかとも思ってしまう。

　あれ、これって、もしかしてクリスマス的な感じ？
　サンタがプレゼント置いてるみたいな感じで、気づいたら取っていいよのシステム……？？

　わからない。
　彼女なら手渡しで渡してきそうではあるため、尚更わからなかった。

「いや……。おれが悪いかな、うん、悪いかもしれないけど、多分あっちも同じくらい悪いと思う」

　配慮は一応出来る。
　好きな彼女のためだからだ。

　一番彼女が傷つかないようなシュミレーションを今からしておこうと考えていた時、根本的なことが分からなかった。

「まって。どういう反応するのが正解、これ」

　渡されて、「うわぁ〜、チョコレートじゃん。待ってた〜〜ーー」みたいなテンションで行っていいのか。
　それともなんか「あ、……あ。ありがとうね」みたいな。

　……いや、それは明らかに冷蔵庫見たって分かるもんな……。