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「え。なに、この高難易度なバレンタイン。……聞いたことが無さすぎる」
なんでこんな焦っているんだとふと我に返ったとき、玄関の鍵が開く音がして彼女の声が聞こえた。
「……ただいまァ〜」
────バンッッ。
まるで八つ当たりのように冷蔵庫の扉を閉めたゆきむらさん。彼女がリビングに入ってくるよりも前に準備にソファーでくつろいでいる風を装った。
「あ? なに。なんかすっごい音したけど」
「いや、虫居た」
「キッッモ」
対して興味もなさそうに自室へと荷物を置きに行く彼女。気づいてはいない。とりあえず、まだ大丈夫そうだ。
「つかおまえ朝っぱらからどこいってたわけ?」
「買い物〜」
「言えよ」
「カレシの前で買うもんでもなかったし」
「は?」
一通り荷物を置いた後、彼女は買い物で買ってきた一つをゆきむらさんに渡す。今日はこれがメインで外に出ていたのだ。
「ん、コレ。……一応美味しそうなのは選んだ」
「ん? ん? ん??」
「ナニ。いらないわけ?」
「あ、いや……」
百貨店の地下。
今バレンタインのチョコレートフェアをやっている時期で朝早くから並ばなければ買えないショッピングバックを渡すもののゆきむらさんの反応は彼女が思っているものと違った。
それはそうだろう。
なんせ、ゆきむらさんは先程冷蔵庫で手作りのチョコレートをこの目でハッキリと見たのだから。
「なに。ホントに。ハッキリしないのきもいんだけど」
「え。……え、これ何」
「なにって、バレンタインのチョコレートだけど」
「え……、だよね?」
「……ホントになんなわけ?」
そんなことを知らない彼女からしたら挙動不審なゆきむらさんが本当に気持ち悪くて、少しイライラしてしまう。
せっかく喜んで貰えると思っていたのに、思っていた反応と違った。
「ちょ、冷蔵庫あるやつはなんなの」
「れいぞう………………、ぁ!」
ゆきむらさんがいうか迷っていたことを口に出された瞬間、彼女は自分がしたことを思い出した。
数日前、KnightAの彼女達がチョコレートを作ると言うからそれに参加しないかと言うお誘いを貰って暇だったから行ったのだ。
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年12月4日 8時