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ふわっと香る香水。そういうのに疎い私はその匂いがなんなのか特定は出来ないが、これがカレの匂いなのだと分かるとちょっとドキドキしてしまう。
結構、好きな匂いかも……。
ほどよい力加減と、しゆんさんほどゴツゴツしてない体。包まれてるがしっかりわかるそれに自然と身を任せてしまう私がいた。
「……髪の毛、やわらかい。ふふっ、ふわふわだね」
「そう……、かな?」
「うん! 僕ふわふわの髪大好きっ」
「……、まひとくん、あの。簡単に女の子に『大好き』なんて言ったら勘違いしちゃう子居るよ……?」
「勘違い?」
「そうだよ、勘違い」
顔も声も申し分ないくらい綺麗で可愛いんだから、そんなパーフェクトボーイに『大好き』なんて言葉を貰ったら例えリップサービスであってもコロッと落ちちゃう女の子が出てきてもおかしくない。
「……勘違い、しちゃったの?」
「っ、しそうに、なったってだけで……!」
「……そっかー。……残念。
結構僕、本気だったんだけどな」
「はっ……、」
「勘違い。……してても良かったのに。あははっ」
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一瞬この世の時間が止まったのではないかと錯覚してしまうほどドキリと大きく心臓が跳ねて止まった気がした。気がするだけで全然止まったわけではないのだが、逆に今度はドドドドドッと耳元に心臓があるのではないかと思うくらい自分の心音が分かる。
『結構僕、本気だったんだけどな』
『勘違い。してても良かったのに』
この二つの台詞を抱きしめたまま言われるともう、普通に無理。心臓が持つわけない。
「まひ」
第三者の声が聞こえた瞬間にばっと、勢いよく胸を押して距離をとる。
「あっ、ばぁうくん! ってことは交代の時間かー」
ちょっとだけしゅん、としたまひとくんはもう一度私を見て「またお話しようね??」と言ってきた。
「あー、はいはい。良いから行けって」
「ちょっ、せっかち!!」
席を離れた後でもちらちらと名残惜しく私の方を見つめてくるカレ。ああ、やめて、その仔犬フェイス。軽率になんでも許しちゃいたくなるから、本当にやめて……!
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時